「納税者である国民を小ばかにしている」
佐川氏に対しては、東京社説はこう糾弾する。
「財務省理財局長だった昨年2月の衆院予算委員会で、交渉記録について『売買契約の締結で事案が終了し、廃棄した』と答弁し、この文書の存在を明らかにしてこなかった。ほとんど虚偽答弁ではないか」
「ほとんど虚偽答弁」どころか、虚偽以外の何ものでもない。沙鴎一歩は開いた口がふさがらなくなる。
「佐川氏はまた、価格の事前交渉はしたことがないと明言した。その後、野党が音声記録などを示して追及すると、財務省は『価格ではなく、金額のやりとり』などと人を食ったような釈明をした」
これも「人を食ったような釈明」というよりも理解できない答弁である。財務省の対応もひど過ぎる。
さらに東京社説は力説する。
「国民の怒りが収まらないのは、国民の貴重な財産である国有地がなぜ9割引き、8億円も値引きされたのかー未解明のままどころか、佐川氏をはじめ財務省側に究明しようという姿勢がまったく感じられないからだ。納税者である国民を小ばかにしているとしか思えない態度である」
昨年11月、会計検査院は「必ずしも適切とは認められない点がある」という検査結果を国会に報告している。財務省はこれを忘れたのか。
だれがいまの国税庁を信頼するのか
国税という組織は納税者を前にどこまでも清廉潔白でなければならない。それが、トップの長官が虚偽の答弁を繰り返していたというのである。国民にとってこれほど情けないことはない。しかも国税の上部組織ともいえる財務省が、あきれた対応をするようでは言語道断だ。
東京社説は最後に5年前に佐川氏が大阪国税局長に就任したときに語ったという抱負を取り上げる。
「我々に与えられた使命を着実に果たしていくためには、何よりも国民の皆さまに信頼される組織であることが不可欠」
国税当局の使命とは申告納税という制度に基づいて国民にきちんと納税してもらえるように努めることである。そのためには国民から信頼されなければならない。佐川氏のような長官がいる国税庁をだれが信頼するだろうか。
長官昇格以来、一度も記者会見を開いていない
次に産経社説を取り上げる。
産経社説は冒頭から「政府の高官が説明を尽くさず、逃げ回っていては、昨年の国会の不毛な論戦を再現するだけだ。国政がまたも停滞する恐れがある。政府・与党はこんな簡単なことも分からないのか」と厳しく訴えるが、その通りである。
あえていえば、「不毛な論戦」の部分は余計だ。これまで産経社説は「国会での不毛な論戦を止めよ」と主張してきた経緯があるからなのだろうが、国会の審議は重大な案件があればあるほど、野党が追及して与党が守るというお決まりの論戦を繰り返してきた。それゆえすべてが不毛だとは言い切れない。
東京社説も指摘して訴えていたが、産経社説は「財務省理財局長当時に国会で事前の価格交渉を否定し、交渉記録は『廃棄』したと答弁していた佐川宣寿国税庁長官に改めて説明を求めるのは当然だろう」と書く。
さらに「当の佐川氏は長官昇格以来、一度も記者会見を開いていない。人前で納税の意義すら語れない異常な状態にある。野党側が国会へ出席して説明するよう求めても与党が拒んでいる」と解説する。
産経社説が指摘するまでもなく、佐川氏の振る舞いは異常なのである。正常に戻すには、佐川氏が国会で答弁して国民に頭を下げる必要がある。