さらに読売社説は、規制委が原則40年の運転期間に照らせば、原発から約130キロ離れた阿蘇山で「破局的噴火」が起きる可能性は「極めて小さい」としたことについて、「ゼロリスクに固執しない常識的な判断だった」と評価したうえで、こう書いている。
「原発に限らず、破局的噴火を前提とした防災対策は存在しない。殊更にこれを問題視した高裁の見識を疑わざるを得ない」
読売の主張は産経にくらべて具体的で、それなりに理解できる。
日本で原発を稼働することへの重い問いかけ
根っからの原発嫌いの朝日は社説をどう書いているか。
12月15日付で「火山国への根源的問い」と分かりやすい見出しを付け、冒頭から「火山列島の日本で原発を稼働することへの重い問いかけだ」と書き出している。
前半で「周辺に火山がある原発は多く、影響は大きい。国の原子力規制委員会や電力会社は決定を真摯(しんし)に受け止めるべきだ」と主張する。
今回の広島高裁の仮処分決定は朝日にとってまさに「してやったり」なのだろう。
朝日社説は「司法からの疑義は、今回が初めてではない」と書き、「火山リスクの審査のあり方の不備が、繰り返し指摘されている事実は重い。規制委は、火山学者の意見に耳を傾け、根底から練り直すべきだ」と原子力規制委員会を批判する。規制委の判断をよしとする読売とは正反対である。
朝日社説は「決定は、社会は自然災害とどう向き合うべきか、という根源的な問いを投げかけたといえる」とも指摘する。「根源的問い」とは実に朝日らしい言い方だが、実際、広島高裁はそこまで考えて伊方原発の運転停止を命じたのだろうか。朝日の独りよがりのような気もする。
朝日社説より1日早かった毎日社説の中身
朝日社説は最後を「福島第一原発の事故の教訓は、めったにないとして対策をとらなければ、取り返しのつかない被害を招くというものだった。再稼働を進める政府は教訓に立ち返り、火山国で原発が成り立つかも検討すべきだ」と締めくくっている。
毎日社説(12月14日付)も朝日社説と同様に「世界有数の火山国である日本は、原発と共存することができるのか。そんな根本的な問いかけが、司法からなされたと言えよう」と書く。
さらに後半で「日本で巨大噴火が起きるのは1万年に1回程度とされている。だが、頻度が低いからといって対策を先送りすれば、大きなしっぺ返しを受けることを、私たちは福島第1原発事故で学んだはずだ」と書くが、これも朝日社説と同じ主張である。
最後も「政府や電力会社は、原発の火山対策について、さらに議論を深めていく必要がある」と同じように要望している。
実は毎日社説の掲載は、朝日社説よりも1日早かった。社説を担当する論説委員は、当然、各紙の社説を読んでいるはずだ。朝日は毎日との違いを出すために、「独りよがり」とも言える主張を盛り込んだのだろう。新聞社説を読み比べると、こういう事情もみえてくる。