社内での「お約束」は会社によって異なる。特に最近の新興企業では、これまでになかったような驚きの「NGルール」が次々と生まれているという。ある企業では「入社してすぐ、社員全員からフェイスブックの友達申請が来た」そうだ。最新事情を紹介しよう――。

※本稿は、「プレジデント」(2017年5月1日号)の特集「できる大人の満天マナー」のコラムを再編集したものです。

転職者はご用心!新卒より中途が危ない

「会議室に入ったら、椅子が引き出されたままバラバラの状態。それを見た社長が激怒。社内イントラネットの会議室予約履歴をさかのぼって、犯人探しまで行われました」

amanaimages=写真

こう語るのは、ある新興企業の広報担当者だ。

「これはマナーで解決したい事例ですが、なかにはルール化せざるをえないものもあります。新卒の場合は最初から自社の常識や決まりを叩き込まれるため、意外と問題にならないものです。一方、中途採用者の場合は以前に勤めていた会社のルールを社会常識だと思っているケースが多々あり、違いに戸惑うこともあります。急成長中で、入退社による人の出入りが激しいような企業では、中途採用者用の研修をしっかり行い、ルールとして伝えるほうが後々問題になりにくいですね」

社内ルールは、会社によって当然違う。細かい取り決めはせず、個人のモラルに任せるという企業もあるが、その場合は個々の意識の違いによってマナー違反やトラブルも起きやすい。最近は、特にその度合いが大きくなっているようだ。

そこで編集部では、新興企業を中心に、20社ほどの社員から社内ルールの実態をリサーチした。すると、よく聞くものから驚くものまで、千差万別の“社内ルール”があることが浮き彫りになった。

まず問題になりやすいのは、冒頭のような会議室など社内設備をめぐるマナー違反だ。事前に予約していた時間を超えて使用しているというのはどこの会社でもよく見かける風景。しかし、ある企業ではあまりに頻発することが問題になり、「予約時刻の終了5分前にアラームを鳴らせるように、各会議室に目覚まし時計を設置した」という。

会議室を予約しながら使用せず、キャンセルもしないままというのもよくあるケース。来客の際、「会議室が空いていないので……」と共有スペースに案内するそばで、埋まっているはずの会議室がガラガラだったというのは気まずいもの。そこで「予約開始時刻から15分たっても使用していない場合は、ほかの人が利用していい」というルールを作ったところ、社員には好評。他社でも導入を検討したくなるような「いいルール化」のお手本と言えそうだ。

遅刻や欠勤は誰にどう連絡するか?

ITの進化が及ぼす影響も大きい。今回リサーチしたなかで、企業によるばらつきが最も大きかったのが、当日の遅刻、欠勤、有休取得などの連絡方法だ。以前は上司に電話連絡するというのが常識だったが、メールで済ませる企業も増えている。LINEのグループで一斉送信するという話もある。一方で、「メール1本で許される」という気安さから、安易な遅刻や欠勤が増えるのではないかという懸念も。「休むときはメールではなく電話連絡」と、時流を逆戻りする企業も現れた。

フェイスブックなどのSNSの扱いについては、新興企業と大企業で違いが大きい。あるITベンチャー企業社員は「入社したら、社員全員からフェイスブックの友達申請が来ました。社内のやりとりはメールではなくフェイスブックのメッセンジャーが中心」と話す。対照的に、財閥系の大企業では「社用PCでのSNSの使用やアプリのインストールは禁止」だ。

このような社内ルールの違いは、企業合併時にも問題化する。ある小売り系企業の合併では、先進的な社風のA社出身者は使用済み書類の裏面をメモ用紙として活用していたが、老舗系のB社出身者は、書類はそのまま廃棄し、メモ用紙は別に購入していた。A社出身者は「さすが老舗様は違うわ」と陰口を叩き、両社出身者の溝はなかなか埋まらなかったという。