仕事の効率化という観点からも、上司や顧客がゼロからあれこれ考えて判断するのは効率的ではありません。時間の無駄につながります。念入りに熟考して出てきた結果(作成者の意思)が存在するのなら、そこに不備な点がないかどうかを最終チェックすることに集中したほうが、仕事全体のスピード化につながります。

伝えたいメッセージのあるグラフだけを残す

資料の中で、相手にバイアスをかけるための一例を紹介しましょう。それは、「グラフの簡略化」です。

たとえば、ある事業部の売上の問題を解消する提案資料を作成することになったとしましょう。

その事業部は20種類の商品があるので、売上データを示す折れ線グラフは、20本の折れ線で表すことができます。そのグラフともろもろの情報を分析した結果、3種類の商品に対して売上強化を図る戦略を決めたとしましょう。

その提案資料を作成するときには、20種類の商品の折れ線グラフを書く必要はありません。「3種類の商品に絞り込んだ理由」をスッキリと説明できるグラフを作る必要があります。

たとえば、20種類の売上平均値を1本の折れ線で示し、その平均値に対して、この3種類の商品は大きく下回っているということをパッと見でわかるようにするのです。

20種類の折れ線グラフは必要ない。3種類に絞り込んだ理由を説明できるグラフを作ればいい。

熟考し、検討した結果を資料に提示する場合は、伝えたいメッセージを表現するための加工をすることを考えましょう。

仮に、もしこのグラフに20本の折れ線が表示されていたら、「20個あるうちの3種類に改善策を絞った理由はなんだ? 4種類でもいいんじゃないか?」「いやいや全部を見直そう」などと、こちらの意図していない方向に話が進む可能性も出てきてしまいます。改善策の実行スピードにも影響が出ることになるでしょう。

読むときには「健全に疑う」

一方で、自分が資料を読む側(情報の受け手)になるときには、この「バイアス」に惑わされない冷静な判断が必要になります。受け取った情報や資料にバイアスがかかっていることを考慮に入れて情報をインプットすることが重要です。

ときには、メンバーに依頼したデータ集計や集計対象・方法が間違っていたりすることもあります。その間違ったアウトプットをそのまま自分のインプットにしてしまうと失敗につながります。