また、イギリスの本社ではイギリスのEU脱退に反対する姿勢を明確に表明した。つまり、自社が政治的に左派の思想を持っていることも隠さない。

同性のパートナーがいることを自然に話せる

さらに人材採用においては、いわゆるLGBTフレンドリーな企業としても有名である。数社を経て、現在、ラッシュで広報を務める、自身もゲイという小山大作さんは言う。

「ラッシュで働き始めて、自分が自然に自分自身でいられるってこういうことなんだ、と痛感しました。それまで勤めていた企業で無理をしていた自覚はありませんでしたが、やはり、自分を押し殺していた部分があったんだな、と思いました。私だけではなく、さまざまなセクシャリティを持つ社員がいます。弊社では、雑談中に自然に同性のパートナーがいることを話せますし、時には家族と同僚と一緒に余暇を過ごすこともあります。積極的にオープンにするかしないかはそれぞれの選択ですが、オープンにしたとして、誰もそれを奇異と捉えない社風の中で働ける。気持ちが楽になり、これがあるべき姿だと確信しました」

動物の権利擁護、環境問題、LGBT、フェアトレード、地域再生などの、多方面にわたる社会問題に、コスメを媒介にコミットするラッシュの方針の核はどこにあるのか。2017年9月、ロンドンで行われた同社のイベントで、CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)としてデジタル全般、ブランド構築や商品開発を手掛けるジャック・コンスタンティン氏に話を聞いた。

ジャック・コンスタンティン LUSH チーフ・デジタル・オフィサー(撮影=中沢明子)

――ラッシュは非上場企業ですね。なぜ上場しないのですか。

われわれは上場企業ではできないことをやっていきたい。私企業で居続けるために、意図的に非上場を選択しているのです。上場するとしがらみが増え、やりたいことを100%できなくなる可能性がありますからね。私たちは顧客に生活を彩る楽しい商品を提供していますが、同時に地球上にいるあらゆる生き物がよりよく生きられる権利を持つという希望も、商品を通じてシェアしたいと考えています。

――私企業の問題点として、一部の経営陣が暴走する可能性があると思いますが、そうならないための対策をお持ちですか。

良い商品の開発による利益追求と社会貢献の両立、という志から離れ、道を踏み外すことのないように、時期は未定ですが、社員には自社株を持ってもらい、シェアホルダーとして意見をしっかり言ってもらえる制度を整えることを検討したいと思っています。

また、若いジェネレーションの感度の高さには目を見張るものがあります。若者たちの声に耳を傾ければ、われわれ上の世代を良い方向に引っ張っていってくれる、という明るい希望も持っています。