「家内任せ」ではもうダメだ
私は「働き方イコール生き方」と考えています。日本の経営者には「仕事が忙しくて、子供の進学も就職も結婚も全部家内に任せきりですよ」と自慢する人が多かった。たしかに仕事は大事ですが、誰もがいつかは会社を離れます。人生には仕事以外にも大事なものがあるのです。
私の長男は自閉症で、問題行動も多く、学校でも一時いじめに遭っていました。先生が間に入ってもなかなか解決しない。そこで私は、長男の友人たちを自宅に呼び、直接話をしました。自閉症がどんな障害なのかを説明し、「君たち健常な子供たちに、障害の子を支えてほしい」と訴えたのです。子供たちからも質問が出て、結局は2時間半くらい話しました。それを機に、いじめがぴたりとなくなったのです
それは親である私が、わが子の問題に本当に真剣に向き合った結果ではないかと感じています。先生にとって私の息子は多くの生徒の1人にすぎません。けれども私にとっては、かけがえのないわが子です。
これからの日本は労働人口が減っていきます。それは「働き方改革」のチャンスでもあります。人がいなければ、知恵を出し合って働き方を見直し、生産性を上げるしかないのです。
鉄道の改札口では以前、駅員が鋏で切符を切っていました。それがICカードの登場で、あっという間になくなりました。今後はITやAIの進化により、ホワイトカラーの職務も大きく生産性が上がっていくはずです。短時間の勤務で多くの成果を挙げられるようになれば、家庭と仕事の両立もより容易になるでしょう。みんながいろいろな工夫をして、新しい働き方を探っていくべきなのです。
(構成=久保田正志 撮影=宇佐美雅浩)