筋を通す、つまり原理原則を貫くことに徹する

私など、それらを貫こうとするあまり、新聞、雑誌等で発言したことが、ときの政府や役所に対する痛烈な批判になったりして、政府から、または役所から苦情がきたり、妨害がくるほどです。それでも、私はひるまない。

相手によって生き方を変えるという人も世の中にはたくさんいるでしょう。

「意地を通せば窮屈だ」と、夏目漱石も言っていますが、本音を言ってそれを押し通すというのでは、世の中を生きるには窮屈だし、いじめられる。だから、人は建て前でやり過ごそうとするものです。しかし私は、どんないじめにあおうとも、どんな迫害にあおうとも、今言ったようなことを貫くことを恐れません。

社内でも、もしこれにもとるような人がいたら、厳しく叱責します。

そして、その重要性が根本的にわかっていないような人は、どんな偉い人であろうとも辞めてもらいます。そうすると、はじめはダメージを受けるでしょう。しかし、放っておけば、将来もっと大きなダメージを受けることになるのです。そうやって、私は筋を通す、つまり原理原則を貫くということに徹してきました。

しかし、人間にとって正しいことと、自分にとって正しいことを取り違えてはいけません。自分にとって正しいことは、自分には都合がいいかもしれませんが、他人にとっては都合が悪いかもしれない。自分にとって正しいことというのは、利己的な考え方です。

私の言う考え方の中心に置かなければならないこととは、利己の対極にある利他です。さらに言葉を換えて言いますと、人のため世のためになるということ。それを心の座標軸の中心におかなければなりません。

同時に、やはり事業ですから、誰にも負けない努力が必要です。それは、限度のない努力です。それこそが偉大なことを成し得るための源です。

頑張ると言っても、私一人が頑張っても会社は立派になりませんから、従業員の支援が必要です。300万円の資本金で宮木電機さんの倉庫をお借りしてちっぽけな会社を京都につくったわけですけれど、たった30人弱の従業員と一緒に汗水流して、「頑張ろう、頑張ろう」と言って、本当に朝から晩まで頑張ったわけです。私は、あらゆる機会を見つけては、みんなに「会社を今に日本一に、世界一にしよう」と言ってきました。

できるわけないのです、もともと1万5000円しか持っていなかった男が、人様に300万円出してもらって始めた会社なのですから。

それが「世界一」なんてことを言ってもナンセンスなのですが、私はまじめにそう言っていたのです。ただでさえ「会社がつぶれるかもしれない」という恐怖心に付きまとわれていましたから、自分で自分を励ますためにも、「世界一にしよう」と言わざるを得なかった。

「どんなに偉大なことも、一つ一つの努力、アリの歩みのような一歩一歩の地味な努力の積み重ねでしか成し得ない。一朝一夕にできるものではないのだから、一人一人が地味な努力をする以外に方法はないのです。みなさんは、そんなに頭も良くない人間が、30人程度で努力したところで、そんなことできるわけがないと思うでしょう。そうじゃない。30人でも、限度のない努力、際限のない努力、それを延々と積めば、世界一の大企業というものだってつくれるのです。それが真理であり、ほかに方法はありません」。このようなことを、私は従業員に毎日必死に訴えてきました。