「中年期というのは、女房がいたり、会社組織のなかにいたりで、なかなか奔放に恋愛感情というのは表に出せません。しかし会社も退職して、連れ合いにも先立たれて、なにもかもから解放された人間が求めるものは、と考えたら、やっぱり愛なんですよ。
もちろん友逹や仲間からの愛もありますが、人間は恋愛には最後までこだわるものです。恋愛感情は消えない。年を取ったから肉欲が減るかというと減らないですよ。もうできないけれど、性欲はあるんですよ。本当に枯れちゃう人もいるけれど、枯れない人もいる」
このドラマで扱われているのは老いて仕事がなくなってから死ぬまでの間の話だ。
「金になることが仕事だと思っている人間が大多数でしょうけれど、仕事は金とは無縁のもので、本当に自分のやりたいことこそが仕事だと僕は思うんです。それがシルバーエイジの生きがいになってくる。本当の自分の仕事がしたくなる時期でもあるんです。それが活力になるんですよ。〈創作〉という言葉で言えば、創と作はまるで違う。
〈作る〉というのは、知識と金でもって前例に基づいて作ること。それ対して知恵を使って前例にないものを生み出すことが〈創る〉だと思うんです。創のほうに目を向けると何でもできるわけです。人を喜ばせる、人の役に立つということが最後の生きがいだと思うし、それをやったかどうか、自分の一生を納得してあの世へ逝きたいと思う。その仕事をやっていると体内にドーパミンとかアドレナリンが出てきて、人間は生き生きする。だからこそ恋愛も楽しめるんじゃないかな」
『やすらぎの郷』は、人は死ぬまでアップで見れば悲劇、ロングで見れば喜劇というドラマチックで愛すべき日々を過ごせるのだと教えてくれた。まさに前例のない創作のたまものというべきドラマだった。
(撮影=遠藤 成 写真提供=テレビ朝日)