目視外飛行実現のための2つのハードル

5つの分野の中で、話題の華々しさと異なり、実現までの道のりが一番遠いのが、物流だ。当然ながら、荷物をより遠くまで運ぼうとすれば、目視外飛行の技術と飛行ルールなど環境整備が必要になるからだ。

目視外飛行実現に当たっては、技術面と環境整備の2つのハードルを越える必要がある。技術開発面では第1に目視を代替する機能の実現。要は操縦者が目で見るのと同じ機能を持つこと。第2に運行管理や衝突回避の技術をより進化させること。さらに、第3者に対する安全性を確保する技術の確立も求められる。平たく言えば、故障しにくい機体を作り上げることと、もし故障して墜落しても、被害が抑制できる技術の開発だ。ドローンすべてに共通して必要な技術は、バッテリーの長時間・短充電化の技術である。

環境整備の面では、目視外飛行・第三者上空飛行の要件を定めること(国土交通省・経産省の合同部会が検討)、機体の性能評価基準の策定(経産省・NEDO)。操縦・運行管理にかかわる人材の育成(国交省と民間の講習プログラム)などが挙げられる。例えば、物流であれば、「目視外飛行になるため、物流用の空域を設定する方が合理的」(大木氏)だ。

総じてみれば、ドローン事業化のためのシステム体系をどう構築するかと言えるだろう。

「運行管理については、システム全体のアーキテクチャ(設計思想)の検討が大きな課題。もう一つは、管理のロジック(処理の内容・手順)をどうするか。アーキテクチャとロジックは、世界的にも議論されており、統一的な見解はまだない」(大木主任研究員)

いち早くシステムの要件を確立・明示すれば、技術開発も進むだろうし、新しい活用法も生まれてくるだろう。運航管理システムを確立できれば、システム全体として、国際競争力を持てるかもしれない。行政の「縄張り意識」を超えたスピード感が求められている。

(撮影=Eijiro Hara)
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