「私が捨てたオトコよ……」
そんなこんなで、気づけば6軒をハシゴしていた。
艶っぽい話はなかったが、唯一、おでん屋のママ(70)が「私が捨てたオトコよ」と、石原裕次郎とのツーショット写真を見せてくれたのがご愛嬌。持ちネタらしく、常連たちの笑いを誘っていた。
午後11時すぎ。社長たちはふらふらと帰って行った。案内役の島田さんと2人で見送りながら堀川に目をやると、水面にネオンが映っている。
だが、このネオンも、長くは続かないかもしれない。市の土地区画整理事業の対象で、今の建物は2020年度以降に取り壊され、25年度までに道路などが整備されるという。
帰り道。島田さんが語り始めた。福井県出身。20年ほど前、縁あって折尾に移り、起業した。「カネがないときもあった。それでもここは、安く飲ませてくれた。私を受け入れてくれた」
働く者たちにひとときの安らぎを与えてきた角打ち通り。できる限り変わらないでいてほしい、と願って帰路に就いた。
(記者:吉武和彦)