2017年8月24日発売の「週刊新潮」にて、プレジデント社発行の『がんが自然に治る生き方』(ケリー・ターナー著)について触れた記事が掲載されました。本件記事は、事実確認さえ怠った根拠のない指摘で、いわれのない批判により、著者と弊社に損害を与え、読者の不安を煽るものです。当社では8月25日付で、週刊新潮編集部に抗議文を送付しました。読者の皆様のご不安に応えるため、その内容をこちらに掲載いたします。

※2017年9月18日付で新潮社より本記事に対する回答がありました。内容は弊社の指摘に対する有効な反論となっていないと判断し、掲載しません。(2018年1月24日追記)

週刊新潮2017年8月31日号の記事について

2017年8月24日発売の「週刊新潮」(発行元:株式会社新潮社)に、〈特別読物〉『「がん食事療法本」が「がん患者」を殺す」』(著者:東京オンコロジークリニック代表 大場大)と題する記事(以下、「本件記事」といいます)が掲載されました。

本件記事は、『「がん食事療法本」が「がん患者」を殺す』とのセンセーショナルな表題もとに、その冒頭に当社発行の『がんが自然に治る生き方』(ケリー・ターナー著。原書は2013年に米ハーパーコリンズ社より刊行。日本を含む20カ国以上で出版。以下、「本書」といいます。)がとりあげられています。しかし、本書は、通常の注意力をもって誠実にお読みいただければすぐにわかるように、腫瘍内科領域の研究者、ケリー・ターナー氏の博士論文(カリフォルニア大学バークレー校)に基づく「がんの寛解事例」に共通する要因をまとめた本であり、「がん食事療法本」ではありません。何故、本書をもって「がん食事療法本」と判断なさるのでしょうか。

さらに、本書における「最大の教義は『抜本的に食事を変える』と本件記事には書かれていますが、「がんの劇的な寛解(その定義は本書に明確にされています)」事例を分析した結果、共通して患者が行っていた9項目のうち食事とサプリメントに関する項目は「2項しかなかった(その他7項は主に精神的、社会的なものだった)」というのが本書の主旨です。本書には「食事改善をしたからといって、がんが完治する保証はありません」と明記されています。

加えて、本書の冒頭において著者は「わたしは手術、抗がん剤、放射線の『三大療法』を否定する者ではない」とはっきりとことわっており、本件記事にある「食べ物だけで余命3カ月のがんが消える!」という本件記事が示唆するような悪質な「食事療法本」とはかけ離れた内容です。

本書はその一部をプレジデントオンラインでも公開しており、合わせて、医師による解説も複数掲載しております。週刊新潮編集部は記事の内容を精査しなかったばかりか、そうした容易にアクセスできる文献による事実確認さえも怠り、本書著者、弊社に損害を与え、読者の不安を煽りました。その責任は重大であると考え、ここに厳重に抗議するとともに、本件記事の掲載に至った経緯詳細の説明を賜りたく、折り返しご回答いただきますようお願いいたします。

念のため、以下に本書に関する本件記事の根拠のない指摘、いわれのない批判について反論します。

(1)「1000件を超える寛解事例の分析はどこにも見当たりません」

本書は、ケリー・ターナー博士の博士論文をもとにした「一般書」です。もとになった博士論文はネット上で容易に検索ができ、閲覧可能です。

http://escholarship.org/uc/item/3px3w4g9#page-1

この学術論文を一般の人、とくに患者の方やその家族向けにわかりやすく書き直したのが本書です。また、本書の巻末にはターナー博士が本書を書くにあたって参照した文献のリストが収録されています。

(2)「食事療法を奉じる者が決まって唱えるヒポクラテス語録『汝の食事を薬とし、汝の薬は食事にせよ』を引用しながら以下を強く押し付けてきます」

ターナー博士は本書において「強く押し付け」ることをしないように細心の注意を払った表現を選んでいます。そして、食事療法やサプリメントの摂取に関しては医師や栄養士に相談し、その指導に従うことを繰り返しすすめています。一部を引用します。

「食事改善をしたからといって、がんが完治する保証はありません」

「がんは予防したいけれどいきなりここまではできそうにない、と考えるなら、もっと小さく、ささやかなことから始めればよいと思います」

「(サプリメントは)長いあいだ頼るべきものではないと思っています」

これを「強く押し付ける」と表現するのは本件記事の著者の主観を「強く押し付け」ていることにほかなりません。

(3) 「それらの実践で、ある患者さんに奇跡的な出来事が起こったとしても、因果関係は定かではなく、その他大勢の患者さんに再現されることはまずありません」

本件記事では、この部分をあたかも本書内容への批判のごとく書いていますが、これはターナー博士自身が本書のなかで述べていることと同じです。したがって、批判になっていません。ターナー博士の言葉を引用します。

「(本書に挙げた9項目は仮説であり)まだ科学的に十分裏づけされた理論ではありません」「もしわたしが、『この9項目を実践したらあなたのがんは確実に治ります』と言ったなら、それは人に偽りの希望を抱かせる行為です」

「なぜ、ある人に効く方法がほかの人には効かないことがあるのか。いまのわたしたちにはその理由はわかりません」

この箇所は、プレジデントオンラインでも公開しています(末期がんから自力で生還した人たちが実践している9つのこと http://president.jp/articles/-/13866)。

(4)本件記事著者のもとに訪れたという患者の話:「クリニックの医師からこの本を手渡され、食事療法と高額なサプリメントの購入を持ちかけられたといいます」

本書で、ターナー博士はサプリメントについては非常に慎重な態度をとっており、その有用性は認めつつもあくまでも補助的なものであり「長いあいだ頼るべきものではない」「サプリメントにも、まったく副作用がないとはいえません」「身体のバランスが元にもどったら、少しずつサプリメントは減らしていってください」と指摘しています。

また、本書でとりあげられている9項目はどれも高額なお金を必要とするものではありません。だからこそ、本書がとりわけ高額な医療費が社会問題であるアメリカにおいてベストセラーになっているのです。本書を手渡し「高額なサプリメント」をすすめた医師がいるとすればその医師の行為は問題ですが、あたかも本書がその行為を正当化するかのような記述は、著者の名誉を傷つけ、本書の価値を毀損するものです。

(5)粒子線治療法をすすめられた患者の話:「こんなケースもあります。治療可能な乳がんと診断され、粒子線治療をビジネス展開している民間施設でセカンド・オピニオンを求めたら、この本を読むように言われたようです。手術や抗がん剤のリスクを必要以上に煽り、『治療選択は、あなた自身が決めること。切らずに治せたらそんなに良いことはない。体と心に優しい陽子線を当てて、あとは"免疫力"で治しましょう』と言って、その医師は独自の免疫療法と食事療法をセットで提示してきた。金額はなんと600万円。まるで詐欺師の行状です』

この部分の記述に関しては、まず、「こんなケースもあります」「言われたようです」と記しているように、この話は伝聞をそのまま記したものです。仮にこのような医師が実在したとしても、ターナー博士の著書には粒子線治療についての記述はなく、当然すすめることもしていません。この話が事実であれば、この医師が本書を悪用したということで、患者さんだけでなく著者および弊社も被害者にあたります。そもそも、本書では手術、抗がん剤、放射線の三大療法を批判も否定もしておらず、この伝聞にある「手術や抗がん剤のリスクを必要以上に煽り」という医師の行為は、本書と何の関係もありません。前述のように、ターナー博士は粒子線治療を本書の「9項目」には含めていません。したがって本文中にその記述はなく、この伝聞に登場する医師が「独自の免疫療法と食事療法をセットで提示」する根拠にはなりえません。「まるで詐欺師のような行状」と本書を結びつけることは、一方的な印象操作以外のなにものでもありません。

(6)「この本はターナー氏のように、あれもこれもダメと偏った食を強いることはないようです」

これは、本件記事に登場する別の書籍についての記述のなかでの表現ですが、繰り返し指摘しているように、ターナー博士は著書のなかで「あれもこれもダメと偏った食を強いる」ことは一切していません。したがって、これは本件記事著者の勝手な「思い込み」による記述といわざるを得ません。

以上