2015年、鶴瓶は新作落語「山名屋浦里(やまなやうらざと)」を完成させた。

これは『ブラタモリ』で吉原を訪れたタモリが知った、ある花魁と武士の実話を落語にするように鶴瓶に提案したものだ。つまり原案がタモリの落語だ。

鶴瓶の落語会に“乱入”したタモリ

毎年行っている鶴瓶の落語独演会でも完成後は当然、この噺を披露していた。

「あの人、この話をオレに“やって”と言ったのに、この落語会に1回も来てないんですよ。ホンマ、どういうことや!」

赤坂ACTシアターで行われた2015年落語会の最終日(11月8日)、オープニングのトークでそう言って笑わせていた鶴瓶。公演の最後、「山名屋浦里」を披露し幕を下ろそうとしたその時、客席から不審な男が舞台に向かって歩いてきた。

「なんかあったら嫌やな」

うろたえる鶴瓶の前にあらわれたその男は、花束を持ったタモリだった。

タモリは鶴瓶の落語会に“乱入”したのだ。

ぱっとタモリの顔を見た瞬間、鶴瓶は泣きそうになったという。

「よかったよ」

そう囁くタモリに鶴瓶は胸いっぱいになって、その花束を受け取った。

「なんや、この花束! 菊やないか! オレ、死んだみたいやないか!」

戸部田誠(とべた・まこと)
1978年生まれ。ライター。ペンネームは「てれびのスキマ」。「週刊文春」「水道橋博士のメルマ旬報」などで連載中。著書に『タモリ学』『コントに捧げた内村光良の怒り』『1989年のテレビっ子』『人生でムダなことばかり、みんなテレビに教わった』など。