もちろん現在の新卒採用のルールとして、経団連は「採用広報の解禁は3月、選考の解禁は6月」と示しています。ですが、現状は解禁月よりも先に広報や選考が行われています。あくまで経団連が示しているのは指針であり、守るべき強制力はありません。またルールを破ったからといって罰則があるわけでもありません。そのため、ルールを破る企業が続出しています。
特に、売り手の採用環境なので早くから採用活動を行いたいという企業の思いが、よりルールを破る行為へとつながっています。インターンシップの広報が新卒採用の広報としての機能を果たし、また、インターンシップを通じて得た企業と学生との接点が選考としての機能も果たしている、という面もあります。
インターンシップ増加の理由
この数年間でインターンシップを実施する企業は年々増加しており、また、参加学生も増加しています。なぜ、この数年で増えたのでしょうか?
インターンシップを実施する企業が増加した背景として、1つは、新卒採用が「売り手市場」になっているため、企業が学生に早く接触したいと考えるからです。就職活動中、学生は、一定数の企業の選考にしか進みません。時間的な制約があるため、興味がある企業の全ての選考に参加できないのです。
企業としては、優秀な学生に自社の選考を受けてほしい。そのためには、まずは自社を知ってほしいと考えます。そのため、解禁時期より前から活動ができる「インターンシップ」に注目が集まったのです。
2つ目として、新卒採用のスケジュールが後ろ倒しになり、採用広報解禁までの時間に余裕ができたことが挙げられます。これまで企業は、主に大学3年生、大学院1年生を対象に夏(学生の夏休み中)にインターンシップを実施していました。
ところが、16年度新卒採用から新卒採用のスケジュールが後ろ倒しになりました。それまでの12月広報解禁、4月選考解禁を、それぞれ3月、8月に変更したのです。その結果、早く学生と接点を持ちたい企業が、広報解禁前の動きを積極的にしました。そして、夏だけでなく、秋や冬にもインターンシップが実施されるようになったのです。
特に冬(1月~2月)は、実施企業が多く、夏よりも実施企業数が上回るようになりました。理由は簡単です。新卒採用の広報解禁の直前に企業を知ってもらう。そして、解禁とともにその企業へ応募、選考へとひと続きにつなげたいためです。インターンシップで学生と出会ってから時間がたってしまうと、学生がその企業の印象、イメージを失っていく可能性が高くなり、応募や選考につながりにくくなります。