離陸時の事故は、燃料が多い分厳しい

離陸時のトラブルで怖いのは、ボディーと地面の摩擦などにより引火したときに、その火が燃料に移って大爆発を起こすことだ。その点、到着時は燃料をほぼ使い切っているので、その心配は少ない。イレギュラーな事態で緊急着陸する際にも、上空を何度か旋回してできるだけ燃料を減らすのが原則だ。なかには上空で燃料を機外に投棄する「燃料放出管」を主翼先端部に装備している機種もある。前出のベテラン機長は「条件としてはやはり離陸のほうが厳しいわけで、実際に事故が起きた場合も、着陸時の事故では必ず生き残る人が何人か出るようです」と話していた。

思い出すのは、超音速旅客機コンコルドが墜落した2000年7月の事故である。エールフランス航空のコンコルドがフランス・パリのシャルル・ド・ゴール空港を離陸した直後に墜落・炎上し、多数の犠牲者を出した。燃料をほとんど消費していない離陸時の事故だっただけに、いま当時の資料映像を見ても、信じられないような大爆発だ。結果として乗員乗客の全員(109名)と墜落現場の近くにいた人(4名)も含めた113名の死者を出す大惨事になった。

2003年に退役した超音速旅客機コンコルド(画像提供=エールフランス航空)

以上、着陸時と離陸時の「危険度の違い」を見てきたが、私がインタビューしたパイロットたちは「危険」という言葉は使っていない。あくまで「“緊張する”“より気をつかう”のが離陸時」と話す意見が多いということだ。また離陸時のほうが常に危険なのかというと、事故件数としては着陸時のほうが多いというデータもあり、一概に断定はできない。

とはいえ、事故が起こる確率は離陸滑走をスタートしてからの3分間と着陸前の8分間が最も高いことも事実。航空の世界ではこれを「魔の11分間」と呼んでいる。

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