入部を強制し、退部を許さない力学
4月から始まる勧誘活動、夏の大会、新人戦……中学・高校と部活動に属して、熱心に競技や文化活動に取り組んだ人は少なくない。また、甲子園をはじめ、部活動に没頭して励む子どもたちの姿に感動し、鼓舞される人も多いだろう。
しかし、あまりにそれが身近であるがゆえに、われわれには部活動の位置づけが見えなくなっている。詳細は本書の記述に譲るが、部活動は「生徒の自主的・自発的な参加により行われる」ものであり、「教育課程外」の活動、つまり国が定める、学校で行うべき内容には含まれていない。
にもかかわらず、全国的に4割の学校が「全員部活動に加入すること」という「全員加入制」をとっており、実際には9割近くの生徒が部活動に所属している。
この9割という数字が、「自主的・自発的な参加」だけによるものとは、考えにくい。ここまでに高い加入率は、「部活動に所属するのが当然」とされる、学校文化の実態を示しているといえよう。
そしてその中には、部活動の入り口での「全員加入」といった力学に加え、練習の重荷や人間関係の悩みゆえに「部活をやめたい」生徒をやめさせない、見えない圧力が存在している。
つながりの強さがうみだす「絆」という束縛
生徒どうしの関係でいうと、部活動では土日をも一緒に過ごす濃密な日々が続くため、部活動をやめることには人間関係上のリスクが生じる。
人びとの結束を示す言葉に「絆」がある。学校教育でも頻繁に用いられる言葉だ。
この「絆」には、二つの意味がある。一つが「断つにしのびない恩愛」という積極的な意味であり、一般にはこの用法がよく知られている。そしてもう一つが、「自由を束縛するもの」という否定的な意味である。人と人とのつながりを強化することは、お互いの愛情や信頼を深めることもできるが、そこから逃げられない拘束を生み出すことにもなる。