将棋に熱中する親子が増えている。最年少プロ棋士・藤井聡太四段が9歳のときに優勝した「こども大会」では、出場申し込みが去年の約1.5倍になったという。将棋に打ち込むと、思考力がつくだけでなく、藤井四段のような落ち着きも身につくらしい。それは本当なのか。6月24日、金沢市で開かれた大会をのぞいてきた――。

北陸・信越大会には過去最多の小学生が集結

62年ぶりにプロ棋士の最年少記録を塗り替え、デビュー後の快進撃で日本中を熱狂させた藤井聡太四段。連勝が29で途絶えたとはいえ藤井四段の衝撃と、かつて神武以来の天才と呼ばれた加藤一二三九段の引退と相まって、メディアの将棋への関心はしばらく続きそうだ。

391人の子どもが参加した大盛況の北陸・信越大会。

将棋熱はメディアばかりではない。藤井四段の14歳とは思えない、落ちついた立ち居振る舞いや優しく謙虚な発言は、小さな子を持つ親たちに「うちの子も、あんな風に育ってほしい」という思いを強くさせたようだ。そして将棋は「先を読むロジカルな思考の訓練になりそう」「集中力が増しそう」「マナーがよくなりそう」と期待してしまうのが親心。

子どもの間でも「テレビゲームをしていると怒られるけれど、将棋は怒られない」。しかも、強くなれば藤井四段のように「大人をぎゃふんといわすことができる」と将棋がブームになっている。

大人顔負けの戦い。真剣なまなざしで盤面を検討する子どもたち。

実際、今年で17回目を迎える「将棋日本シリーズ テーブルマークこども大会」の参加申込数は去年の約1.5倍と大幅増。大会は6月24日の北陸・信越大会から11月19日の東京大会まで全国11カ所で開催されるが、主催者側は「今までの会場で対応できるか」と心配しているそうだ。

実はこの大会、藤井四段も2008年、6歳のときに東海こども大会低学年部門でベスト16、8歳で準優勝、9歳で優勝している。いわば棋士の登竜門でもある。とはいえこの大会は「将棋でココロを育てる」という趣旨のもと、出場資格は小学生以下であれば、棋力に関係なく誰でも気軽に参加できる。

大会のルールを簡単に説明すると低学年部門(小学3年生以下)・高学年部門(小学4年~6年生)の2部門に分かれ、まず3局対戦し、3勝した人がトーナメントに進み、そこで勝ち上がった2人が決勝を戦うというもの。決勝戦は持ち時間無し、初手より一手30秒未満の早指し将棋である。

6月24日、全国に先駆け金沢市で北陸・信越大会が開かれたので会場をのぞいてみた。この日の参加者数は低学年部門179人、高学年部門212人と盛況である。

「膝の上に手をおいてください。はい、姿勢をよくして。では第1局をはじめます!」という司会の開始宣言とともに「お願いします!」と元気よく挨拶をする子どもたち。真剣な顔で盤を眺めながら指す姿がほほ笑ましい。パチパチと駒の音がリズムよく響く。とくに低学年部門は指すのが早い。しかも駒を持つ指も実に様になっている。