なぜPRイベントに、どう考えても接点のないタレントが起用されるのか。最近も、戦争映画『ハクソー・リッジ』のイベントにダチョウ倶楽部が出演し、映画ファンから「作品のテーマにあわない」と物言いがついた。『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α新書)の著者で、企業のPR手法に造詣の深い窪田順生さんがその理由を解き明かす。

「この製品やサービスをPRするんだったら、そのタレントの起用はないだろう」というイベントをたまに目にしないか。

例えば、6月20日に行われた映画『ハクソー・リッジ』の公開記念PRイベントはその典型的なケースかもしれない。

ぴあ映画生活より

この映画は、敬虔なキリスト教徒であるデズモンド・T・ドスという青年が、「人を殺す」ということを拒否しながらも太平洋戦争を戦う米軍に入り、激戦地・沖縄の最前線で武器を持たずにたった1人で75人もの命を救った、という実話をもとにした作品である。

俳優だけでなく監督としても活動するメル・ギブソンが10年ぶりにメガホンを取り、『アメイジング・スパイダーマン』などで知られるアンドリュー・ガーフィールドが主人公を演じる話題作だ。

物語の概要からも、派手なアクションだけの娯楽映画ではなく、人間が人間の命を奪い合う戦争とは何か、ということを問いかける深いテーマ性のある作品だとわかる。この映画の魅力をPRするイベントに登場したのが、ダチョウ倶楽部のお三方と、元AKB48メンバーであるタレントの野呂佳代さんだった。

「戦争映画」ということで軍人に扮した4人が、ミニコントを披露。上官に扮した肥後克広さんの仕切りで、寺門ジモンさん、上島竜兵さん、野呂さんの3人が腕立て伏せや、「たたいてかぶってジャンケンポン」など次々と過酷な「訓練」にチャレンジ。「75人を救った」というストーリーにひっかけ、熱い蒸しタオルに75秒間耐える最後の「訓練」では、「上島さんが突然キレる」からの「口論しながら近づいて仲直りのキス」というダチョウ倶楽部の鉄板ネタを披露。野呂さんが上島さんとキスをするという「見せ場」もつくってイベントを盛り上げていた。

このように聞くと、「せっかくのいい作品なのに、その魅力がまったく伝わらない」と頭を抱える映画ファンも多いいことだろう。事実、今回のイベントを受けて、ネット上には「映画とまったく関係ないタレントにPRさせる意図がわからない」と不満の声があがっていた。