東京にはありとあらゆるジャンルの飲食店があり、高級レストランから気軽な食堂、立ち食いまで揃っている。ミシュランの星があちこちで輝いていたり、行列が絶えない店があったり、何カ月も予約が取れない店も珍しくなくなった。そうした店はネットなどでも話題になり、さらに人気が集中し、ますます予約が取れなくなる。

とっておきの“裏名店巡り”

その一方で、東京には知られざるいい店がまだまだたくさんある。素晴らしい料理を出すのにネットなどで取り上げられないために意外に予約が取りやすい店、かつて一世風靡したけれど最近はマスコミに取り上げられることが少なく、しかし円熟味を増して今が絶頂の美味しさになっている店など。流行やネットの評判に関わりなく、「本当に今こそ行ってほしい東京の店」を集めたのが今回の「美味東京」特集だ。

dancyu最新号(2017年8月号)。特集は、ダンチュウが案内する東京ベスト店「美味東京」

本音を明かせば、「予約が取れない店」ばかりがフィーチャーされ、そこに行くことをステータスとする“食通”が増えていることに対する、ちょっとしたアンチテーゼでもある(当初は「予約が取れる店」特集にしようかと思ったくらいだ)。「『予約が取れる店』を紹介したら、すぐに『予約が取れない店』になるではないか!」というご指摘もあるかと思うが、今回紹介した店は、いずれも仮に予約が殺到したとしても、無理に予約を取らず、従来通りのペースを守り、丁寧に対応してくれる店だと思っている。これもひとつの選択基準だ。

こうした「本音で提案すること」を新しいdancyuでは打ち出して行きたいと思っている。dancyuという雑誌に人格(?)を持たせたら、どのような食の楽しみを提案するのか、を考えていきたいと思っている。今回の「美味東京」でも、「食いしん坊の友人から『東京で旨いもの食べたい!』と言われたらどうするか」を基準に本音で店選びをしたつもりだ。担当の編集部員が、自分がよく行く街の実際に飲み食い回っているルートをご紹介している記事もある。私は銀座を担当したが、本当に食いしん坊の友人を連れて行く、とっておきの“裏名店巡り”を明かしてしまった……。