強制することが法律上許されず、相手の同意がなければ行えない手続きは数多い。だが、事実上のプレッシャーを与えて同意を取ってしまうことは、警察官にとってお手のもののようだ。

「いかにも法的根拠があるように『指紋を採らせてもらう決まりになってます』と、巧い頼み方をする警察官も多い。『決まり』と言われると、法的義務かと錯覚するが、これは警察組織内で現場の警察官が上司から言われているだけのことだ。それでも拒むと、『協力してもらえなければ、家族の方にも連絡することになる』などと言いくるめようとする場合もある」(同)

組織の決まりに従順な警察官は、指紋が採れるまで延々と説得を続けるかもしれない。では、指紋押捺をうまく拒む方法はないのだろうか。

「警察官が『決まりだから』と言ったら、『法的根拠を教えてください』と言う。警察官は答えられない。『自筆署名か認印でもいいんじゃないですか』と聞く。『いい』と言われれば、これでおしまい。『ダメ』と言われたら、『法的根拠がなければ、強制できませんよね』と断わる」(同)

「対応がしつこいか、サバサバしているかは、警察官個人の資質の問題。できる警察官は同意が取れなければ速やかに退いてくれるが、ひどい警察官になると、一方的に転んでおきながら『オマエ、突き飛ばしたな』と言いがかりをつけ、公務執行妨害で逮捕して指紋を採ろうとすることも考えられる。クルマの場合は、ドアを開けて降りないことも大切。また、車内に三文判を備えておき、違反で捕まった場合に指紋代わりに押す手もある。指紋と違って警察官と対等な関係を維持できる」(同)

※すべて雑誌掲載当時

(ライヴ・アート= 図版作成)