【5項目にわたる「宰相の条件」】
(1)浪人時代の交友
官をひいて家に居るとき、つまり浪人しているときに、どのような連中とつきあっていたかを観察することです。
(2)「時」と「金」とを人材養成に使う
莫大な金を握ったとき、それを何に使ったかを見ること。いきなり、女を囲ってみたり、書画骨董や宝石などにうつつをぬかしたりするようでは、宰相たる資格はありません。
(3)抜擢した人物、推薦した本
高位高官にのぼったとき、どのような人物を抜擢し、どのような書物を推薦したかを見ることです。過去において、とんでもない人物を抜擢していたら、それだけで宰相は失格です。「人をみる明」がなければ、宰相など一日としてつとまるものではないからです。
(4)「灰の時」の沈潜のしかた
人の一生を大きく分けると、「焔の時」と「灰の時」とがあります。「焔の時」とは、燃えさかる焔のように、勢いがあり、たいていのことはうまくいきます。一方、「灰の時」というのは、何をやってもうまくいきません。そういうときは何もやらないのが一番いいのです。ところが、小心者に限って、そういうときに何事かをやらかして失敗してしまいがちです。
「灰の時に入った」と自覚したら、静かに「灰の中」に没入し、沈潜して、人間を磨くことです。実力を養成するいいチャンスだというくらいに考えたいものです。
(5)貧ニシテ楽シム境地
懐具合もよく、万事好調のときは、人間はあまりオタオタしないし、ボロも出しませんが、同じ人間がいったん貧乏して困った状況になると、一変して悪くなることがあります。そして、それが手にしてはならない金だとわかっていても、ついポケットへ入れてしまうことが起きてきます。そんな誘惑をいかに歯をくいしばって我慢するかどうか、そこが人物のわかれ道となります。
※本連載は『帝王学がやさしく学べるノート』からの抜粋に、修正・補足をしたものです。