日本一安い神戸市は月平均で1.1万円

一方、水道光熱費の支出がダントツに少なかったのは神戸市の13万5735円だった。こちらも月割りにすると1万1311円になる。青森市の実に半分以下で、比較すれば毎月1万3000円も少ない。2位以下は、千葉市16万1785円、川崎市16万5720円、名古屋市17万8058円、宮崎市17万8310円の順。こちらは地域や気候との関連はほとんどみられず、宮崎市を除けば政令指定都市が顔を揃える。詳しく数字をみるまでは「大都市は水道光熱費が高い」というイメージをもっていたが、それは根拠のない思い込みだった。実際に東京都区部は19万4505円、大阪市は18万6014円と、ともに全国平均の約21万円を下回っている。

では、なぜ神戸市は水道光熱費が日本一安いのか──。神戸市役所に問い合わせたところ、「電気料金、水道料金が他の都市に比べて低いからでは」(政策調整課)とのこと。確かに電気代(6万2505円)、上下水道代(3万818円)、さらに灯油代(1167円)の3部門において最低支出の座に君臨。野球でいえばヤクルトスワローズの山田哲人選手ばりのトリプルスリーを達成しているのである。

「神戸市の場合、水道料金は20年間、下水道料金は30年間一度も値上げをしていません。加えて10立方メートルまでの使用量は固定料金(税込950円)に含むという、住民負担を軽減する制度設計にしているところに要因がある」(神戸市水道局計画調整課)と、関係者は行政努力を強調した。電気代については神戸市に電力供給する関西電力に問い合わせてみたが、「この件に関する特段の資料はない」(広報部)とのこと。

数字では測れないが忘れてならないのは、神戸市民一人ひとりの水や電気に対する特別な思いである。「あのとき消防の水がきていれば」「電話がふつうにつながったなら」……。阪神・淡路大震災の被災体験が強い節電・節水意識となって市民に定着し、電気・ガス・水道の使用量を無意識に抑えているという見方もある。

六甲、有馬温泉、ポートタワー、元町、神戸牛。観光で通り過ぎるだけが神戸じゃない。“日本一お金のかからない”都市・神戸。転勤するなら、住み替えするなら、「そうだ、神戸に行こう!」。