あるとき、絵本や児童文学の関係者が集まる会で、素敵な話を聞いた。ある編集者が作家のところに通っても、なかなか作品ができてこない。10年くらいかけて、ようやく1冊の絵本ができた。

なぜそんなに時間がかかったのか。その作家さんは、「何しろ、子どもに読ませるものだからね」とおっしゃったという。子どもの生涯に大きな影響を与える作品なのだから、それだけ思いを込めてきちんとつくらなければとその作家さんは考えた。

子ども向けだからこそ真剣に考え抜いてよいものを、という心意気は、絵本や児童文学に関わる作家さんの多くによって共有されている価値観だということである。

少子化の問題が指摘され、一人ひとりの子どもの個性を大切に育むことが求められている現代。子どもを大切に、という精神は、ますます重要になってくるように思う。

イノベーションが今まで見たことがないような新世界を切り開く、現代のビジネス環境。新しいことに感激し、探究心をもって学ぶ「大人の中の子ども」に働きかけることが求められている。

見せかけの価値ではなく、ほんものをこそ追求するという精神を、子ども向けから大人向けまで、さまざまな分野で大切にしたい。

(写真=AFLO)
【関連記事】
なぜスタジオジブリは映画から撤退するのか
『アナと雪の女王』大ヒット、ディズニー制作現場の裏側
「ポケモンGO」が世界的大ヒットした理由
「妖怪ウォッチ」の原点は「江戸妖怪大図鑑」だった
なぜ「ガンダム」は飽きられないのか