雪上ドライブで実感した“踏ん張り感”
こうした小型化の象徴は、とりわけリアデファレンシャルによく現れている。使用材料の持つ強度と特性を使い切るという設計の考え方と、必要なときに必要なだけ駆動力をかける、最大トルクに合わせて余裕を持たせる強度・大きさにはしない(しかし耐久性は十分に確保する)という発想によって、軽自動車並みの小型のユニットに仕上がった。
毎秒200回という高い頻度で、スリップを検知し駆動力配分の演算をしていることの効果は、システムの軽量化やその機械抵抗低減と相まって、総合的なエネルギー・ロスの低減にも大きく貢献している。マツダの社内測定によれば、従来のCX-7との比較では、79パーセントも低減しているという。
理屈はわかった。しかし、現実にはどんな製品に仕上がっているのか?
幸いなことに、12月下旬、このマツダ独自の発想から生まれたAWDメカニズムの性能を実際に試してみる機会があった。ところは、北海道旭川市から北にクルマで1時間ほどの剣淵町にある同社の剣淵試験場。もちろん、12月の北海道、雪上のドライブだ。性能を確認するための試乗車は、昨年12月に発表されたばかりの新型CX-5ディーゼルエンジン仕様のAWD車。
試験場のコースを、4つのタイヤがスリップすることなく路面(雪面)をつかんでいる、という感覚は雪道での経験があまりない筆者にもよく実感できるもので、それは、駆動力をかけることに主眼を置いたAWD車とは異なる心地よい安心感を抱かせた。とくに、下りのカーブを降りていくときの“踏ん張り感”は 今まで味わった記憶がない上質なものだった。
カーブのときだけではない。直進時のステアリングの修正がほとんど必要ないことも実感できた。現実の運転では、意識していなくても知らず知らずのうちにドライバーは真っ直ぐ走らせようと微妙にステアリングを操作しているものだ。ところが、新型CX-5のAWDは、雪上の直進でステアリングの修正をほとんどしなくてすんだ。とにかく真っ直ぐ走る。これはマツダの新しい発想のAWDメカニズムに加え、Gベクタリングコントロールの効果によるところが大きい。(「マツダの新技術!『Gベクタリングコントロール』で運転がプロ並みに?」参照 http://president.jp/articles/-/20368)
スリップの制御ができるというメカニズムのおかげで、路面が刻々と変化するような状況でも、安心してドライブができる、というのは決して不当表示ではない。
剣淵の試乗会では、タイヤが常に接地してクルマの駆動力を常に的確に無駄なく伝えることの重要さ、そしてそれを実現することがクルマの性能、そしてドライバーの安全運転に大きくかかわっていることを教えられた。