自分を“主語”にしたキャリア形成
このように自身のありたい姿を考えることは、本来、キャリア形成の第一歩なのですが、日本企業では、特に大企業では社員が自身のキャリア観について深く考えないように教育します。キャリアアップとは、企業のなかで立場を高めていくことだと刷り込むのです。
なぜなら、キャリアについて考えを深めていった結果、「転職したほうが、メリットが大きい」と気付いてしまうと、多額の投資をして採用し育成してきた優秀な人材が会社を去ってしまう可能性があるからです。
しかし、それであなたは幸せになれますか? 自分がどうなりたいのか考えを深め、それを実現するために努力を重ねるほうが充実した人生を送れるとは思いませんか? 会社に残る道を選ぶにしても、キャリアについて徹底的に考えた結果、その会社でこそ自分は幸せになれると思えたほうが、納得できるのではないでしょうか。このように“自分”を主語にしたキャリア観を持ち、それを具現化するため、自身のスキルや技量によって主体的にキャリアを選択することを「自律的キャリア形成」といいます。
そして、この自律的キャリア形成を実現しやすい仕事の一つがコンサルタントなのです。
今、コンサルタント業界は、変革のまっただ中にあります。専門知識を武器に企業経営に対してアドバイスするだけで終わりではなく、成果にコミットするところまでを強く求められるようになってきたからです。以前のように、先行している欧米の知識を日本へ持ち込み、それを切り売りしながらレポートや提言としてまとめるだけで高額の報酬を得られた時代は終わろうとしています。
しかし、それは裏を返せば、自身のスキルや技量次第でいくらでも可能性が広がる時代に入ったともいえます。ここに自律的キャリア形成を実現しやすい土壌があるのです。
それに、コンサルタントは魅力的な仕事です。企業の経営幹部に助言する責任は、しびれるほどの「やりがい」を得られます。責任が高い分、報酬水準が高く、1000万円プレーヤーなど、ゴロゴロいますし、実力次第で年収数千万円稼ぐこともできます。また、さまざまな業界・業種にわたり企業経営のノウハウを身につけられるため、他業界へ転職する際も有利になりますし、事業会社で事業を動かす側の経験を積み、再びコンサルタントへ返り咲くといったキャリアパスも可能です。
このあたりのことについての考えをまとめたのが、このほど上梓した『コンサルタントになれる人、なれない人』です。この本では、自律的キャリア形成に欠かせないキャリアに対する考え方や自分なりのキャリア観を見出すノウハウについてもまとめていますので、コンサルタントという仕事に興味がある人だけでなく、自身のキャリア形成に不安や不満を感じている人にも一読いただければと願っています。
マネジメントソリューションズ代表取締役
上智大学経済学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。2001年よりキャップジェミニのマネージャーとして経営管理・業績管理のコンサルティングプロジェクトに携わる。その後、SONY Global Solutionsにてグローバルシステム開発プロジェクトのPMOリーダーとして活躍。05年、マネジメントソリューションズを設立。