初代ロードスター、ポルシェ・ケイマン、ルノー・キャトル

4代目ロードスターのプロジェクトを始めるにあたり、主査の山本修弘氏は、四半世紀を超えて眼前にそびえ続ける巨大な壁「初代ロードスター」に本気で挑む覚悟を固めた。

ユーノス・ロードスター(1989年)

スペックでクルマを評価している限り、4代目ロードスターは2代目や3代目と同じ轍を踏むことになる。初代を超えるためにはどうしたらいいか? そう考えた山本氏は、歴代ロードスターを含む世界各国の15台のクルマを用意し、27人のスタッフを招集してクルマの楽しさを評価する試乗会を開催した。試乗会の目的は「乗って気持ちいいクルマを選ぶ」だ。

その結果、軍配が上がったのは初代ロードスターだった。同時に高く評価されたのはポルシェ・ケイマン、ルノー・キャトルという全く方向性の違う顔ぶれだ。しかし共通点がなかったというわけでもない。そのテストを振り返った操縦安定性担当エンジニアは「3台ともコーナーを曲がる時のクルマの振る舞いが、体感的にも視覚的にも手に取るようにわかりました」と言う。それはドライバーとクルマの間での情報連携が緊密であることを示唆している。

2代目ロードスター(1998年、左)、3代目ロードスター(2005年発表、右)。

4代目のテーマは「原点回帰」と「感」

こうして4代目ロードスターは「原点回帰」を目標に、フィーリング、つまり「感」をテーマにすることが決まった。言い方を変えれば「人間中心」のクルマ作りである。数値や技術的進歩ではなく、クルマが人にどんなフィーリングをもたらすかに注目するということだ。とは言え、一言で「感」と言ってもあいまいすぎる。そこで、山本主査はコアメンバーを集めて討議を重ね、その「感」を3つに集約した。「手の内/意のまま感」「軽快感」「解放感」である。

オープンボディを持つロードスターの場合、「解放感」は余程のことをしない限り確保される。大変だったのは残り2つの「感」だ。しかしさほど議論を重ねることなく、その大方針は決まった。実は全員の頭の中にあったのは最初から同じ答えだったという。

「軽くすること」。極めてシンプルだが、クルマが軽量なら「手の内で意のまま」に運転しやすく、当然「軽快感」にも優れる。動力運動性能でも有利な上、環境性能や生産コスト、安全性能でも有利である。

どうやって軽くするか。膨大なコストを掛けて良いなら方法は色々あるが、ロードスターの原理原則には「アフォーダブル(手頃な値段)」という単語が入っている。安くなくてはならないのだ。そこでボディの徹底的な小型化を図った。3代目と比較してみると明らかだ。

・車両重量:マイナス130kg
・全長:マイナス105mm
・全幅:プラス15mm
・全高:マイナス10mm
・ホイールベース:マイナス20mm
・フロントオーバーハング:マイナス45m
・リヤオーバーハング:マイナス40mm
4代目「マツダ ロードスター」