「有休消化」で垣間見えるあなたの職業観
これら3つの配慮ができるリーダーに共通しているのは「無私の精神」かもしれません。部下の成長を自分の喜びとし、会社の業績向上を第一に考えています。また、自分に任せられた部署では、冷静かつ情熱的に仕事に対処していきます。誰が見ても、落ち着きがあり頼りがいがあります。こうした人間性は平時にはなかなか見抜くことは困難なのですが、会社がピンチになると明らかになってきます。
働き方の変化に伴い、いくつもの会社を移ることをキャリアデベロップメントの一環と考える人たちも増えてきました。半面で、ビジネス人生を1つの会社でまっとうするという価値観も依然として根強くあります。基本的には雇用システムの二極化が進んだと認識してさしつかえありません。「人材大流動化時代」とか「転職時代」という言葉も見かけますが、私はこれには異論があります。日本では、まだまだ終身雇用型・長期雇用型が継続しながらも、IT・ソフト・先端技術業界(再生医療やロボット関連)などの歴史の浅い新興産業は比較的流動性が高いと考えるべきでしょう。
当然、比較的若い時期に現在の会社を辞めるという選択肢も出てくるはずです。あえてコメントさせてもらうなら、そこでも清々しい辞め方というものがあります。例えば、消化しきれていない有給休暇をどうするかなどです。権利として全部取得するのは構いませんが、その人の職業観が垣間見える瞬間かもしれません。
なぜなら、日本の会社、なかでも上場企業は、社員への教育投資には、それなりのコストを投じているものです。宿泊施設を利用して行われる新入社員研修からスタートし、何年かするとフォローアップ研修や職階別研修も行われます。非常に数は少ないものの、社費でのMBA留学などはその最たるものといっていいでしょう。それ以外にも、折に触れたOJTは枚挙にいとまがありません。つまり、会社に育ててもらった恩は間違いなくあります。よく「立つ鳥跡を濁さず」といいますが、恩に後ろ足で砂をかけるようなことは厳に慎むべきです。
いずれにしても、辞め方は大切です。当社の場合も、過去に同業他社に移ったという例もありました。もちろん、会社としては、競業避止とはいっていますが、それまでがんばって会社に貢献してくれた人でしたから、綺麗な去り方であれば黙認したこともありました。先輩や仲間たちに見送られ、「お互いいい仕事をしよう」とエールを交換して退職していったのを昨日のことのように覚えています。できることなら職業人生活というものは、いつもそうありたいものです。
サーチファームジャパン社長
1968年生まれ。石川県出身。日系、外資系、双方の企業(航空業界)を経て約18年の人材サーチキャリアを持つ。経済界と医師業界における世界有数のトップヘッドハンター。日本型経営と西洋型の違いを経験・理解し、それを企業と人材の マッチングに活かすよう心掛けている。クライアント対応から候補者インタビューを手がけるため、 驚異的なペースで 飛び回る毎日。2003年10月サーチファーム・ジャパン設立、常務。08年1月代表取締役社長、半蔵門パートナーズ代表取締役を兼任。