自分の中にある言葉をただ「書き出す」だけ

物事を深く考えるのが苦手、という人にお勧めしたいトレーニングがあります。そのひとつが、文章化です。

私たちが悩んでいるときは、第1層ネットワーク(http://president.jp/articles/-/20439?page=2)をさまよっているような状態です。これは「もうダメだ」という箇条書きの一文が頭を占領して、ぐるぐる回っているようなもの。あまりに近視眼的で、これでは解決へつながっていきません。

そこでまず頭の中に浮かんだことを、単語でもいいから書き出してみる。そして関連ある言葉をつなげてネットワークの図にします。マインドマップ(http://president.jp/articles/-/20439?page=2)、心の地図ですね。それを見ながら考えていることを整理して、最終的に文章化できたら完璧です。いきなり「もっとよく考えろ」と言われると怖気づく人でも、自分の中にある言葉をただ「書き出せ」と言われたら、できそうな気がしてきませんか? そしてそれこそが深く考える行為なのです。

文章はしんどくて書けない! という人は、“色の日記”を試してください。まず用意するのは、24色の色鉛筆とノート。そして1日の終わり、今日の気分に合う色でページに小さくマルをつけます。どんなとき、どんな色を塗るかは感性次第。正解はありません。そして翌日、マルの横にその日の新しいマルをつけていく……。

この日記は大体、毎日、色が変わります。それを眺めると、人間の感情はその日その日で全然違って、あてにならないことが強く実感できるんですね。さらに継続すれば、自分の感情の流れをつかめるようになります。「この色の日に決めよう」「この色のときは考えないほうがいい」と判断できるようになるのです。

こんな実験結果があります。暗い音楽をずっと聞かせて気持ちが沈んでいるグループと、アップテンポの曲を聞かせて昂揚しているグループに、アイデアを出させたり、計算問題を解かせたりしました。すると前者は計算間違いをしなかったのです。ネガティブな感情のときは慎重になって、精密な判断ができる。一方、興奮状態のときは、質はともかく、たくさんのアイデアが出ることが判明しています。

感情というのは揺れ動くのが当たり前のもの。そして感情に合わせた思考があるわけで、その相性をうまく利用すればいいんです。たくさんのアイデアを出したいときは、ポジティブな気持ちのときを見計らい、ネガティブな気分のときに、正確な答えを出そうと努めてみる。考え事をする際、「今の感情で適しているかな?」という視点を1つ持つと、よりよい結果が導けるはずです。