今夏発刊された『離婚とお金 どうなる? 住宅ローン!』(プレジデント社・高橋愛子著)が話題になっている。熟年離婚が増加している中、トラブル続出なのが、夫婦共有の名義で購入した家(一戸建て、マンション)。ただでさえ心労の多い離婚の手続きに、ローン残債や連帯保証(債務)などお金の問題などが降りかかり、最悪の場合、破産するケースも。本書の取材・構成を手がけた、永浜敬子氏がレポートする。
定年後、離婚で住む家が消滅する恐怖
1分に1組のカップルが結婚して、2分に1組が離婚するといわれている現在。離婚率自体は横ばいで推移しているが、最近、着実に増えているのが熟年離婚である。
厚生労働省の統計(人口動態統計)でも、20年以上連れ添った夫婦が離婚するケースが大幅に増加している。性格の不一致や不倫など理由は様々だが、どの夫婦にもほぼ共通しているのは「すんなり離婚できない」という点だ。離婚はエネルギーとお金、そして精神的な負担が大きくのしかかる。と巷間しばしば言われるが、実際その通りだ。
日本における離婚のしかたは、ほとんどが話し合いによる協議離婚だ。全離婚件数のうち約9割を占める。協議される内容は、「子供の親権や養育費の金額」「慰謝料の金額」「財産分与」などが多い。
「慰謝料」は有責行為(浮気など)で離婚の原因を作った側が、配偶者に支払う損害賠償。それに対して「財産分与」は、離婚原因に関係なく、原則として公平に夫婦で山分けされる。
山分けの対象は、夫婦共同名義で購入した不動産や家具や家財だけでなく、夫婦の片方の名義になっている預貯金や車、有価証券、保険解約返戻金、退職金なども財産分与される。
このあたりまでのことはご存知の人も多いかもしれない。しかし……後々までトラブルの種となりやすいのが不動産に関する問題だ、という認識は案外低い。
慰謝料や養育費などは分割して相手(妻か夫)に払うこともできるが、住宅ローンは契約している相手が金融機関なので、ひとたび返済が滞ると、一括で返さなければならなくなる。
しかも借り入れの額も何千万単位だ。ところが協議離婚でどちらかに有責行為があった場合は、慰謝料・親権・養育費(子供がいる場合)が争点になることが多く、不動産の問題は後回しになりがちである。