「値段と質は比例する」とわかってはいても、安くていいものを買いたいと思うのが人情。その願いは、大量生産する量販店スーツでこそ叶う。

近年、安い価格でも見映えのいいスーツが手に入るようになった。だが、懐事情で予算は決まるとはいえ、できるだけ高級感を演出するには、最低どれぐらいの出費が必要なのだろうか。ファッションレスキューのスタイリスト・中村龍太さんは「少なくとも4万円前後」の出費を勧める。

「2万円のスーツは大体3万円以下に見えますが、もう少し奮発して3万円台まで出せば、6万~8万円に見せることが可能です。10万円のスーツのビジュアルを目指すなら、4万円は必要ですね」

スーツを選ぶ際、最初に注目するポイントは生地。いい生地になればなるほどしなやかさやハリなどの表情がでるので、スーツのオーラが出やすい。

ひとつの目安になるのが、スーツのタグに「SUPER○○」と示されているスーパー表示だ。大体100ぐらいから記載されており、数字が大きくなるほど糸の繊維が細くなる。

何も書いてない場合は100未満の可能性があり、高級なスーツは150以上の数字になることも。

タグのありなしは重要●スーツの左袖口にあるタグで、ブランド名、生地の産地、繊維の太さなどの情報がわかる。タグの付いたものを選ぼう。

「生地の産地もチェックしましょう。イタリア産は柔らかいので軽くて着心地のよいスーツに、比較的硬めのイギリス産だとビシッとしたスーツになります。日本産はイギリスに似て少し硬めで、日本の気候に一番合っていて、コストパフォーマンスが高い。着る用途に合わせて選んでください」

生地の次は、サイズ感がポイント。優先順位は肩から。反対の手で軽くつまめたらベストだ。ウエストはボタンをしめて拳がひとつ入る程度、袖丈は手首を外側に曲げたとき、ふれるかふれないか程度であればよい。

購入したスーツは、手入れをすれば長持ちさせることができ、それによりコスパが上がる。高いスーツほど長持ちしそうだが、実際は繊細な糸を使用しているため傷むのが早い場合がある。

「長く着るには、連続して着用しないこと。1日着たら2日休ませて、3日後に着るようにしましょう。そしてまめな手入れを心がける。特にブラッシングは大事です。スーツ生地の定番であるウールは埃がたまると、呼吸できなくなって光沢が失われていくので」

最後に、中村さんは靴の重要性について教えてくれた。

「1万円前後で靴を購入されているなら、そこで3万円の靴を履けばより全体で10万円に見えます。靴はスーツよりも耐久年数が長い。投資する価値がありますね」