今後の強化のカギは「専属化」?

セブンズ強化の流れはできた。もっとも効果的な強化の場は、復帰したワールドセブンズシリーズとなる。今後の課題は、これからの継続強化をどう確保できるのか。とくに日本代表候補選手のスペシャル化、15人制ラグビーとのすみ分けだろう。

ワールドセブンズシリーズと、15人制のトップリーグが重なることもあり、もはやセブンズ選手の15人制との掛け持ちは無理である。男子セブンズ日本代表の桑水流裕策主将(コカ・コーラ)は「難しい問題だと思いますが」と前置きし、こうつづけた。

「ほんとうにセブンズでオリンピックを目指したいと思う選手は、所属チームに許可をもらって、3年なら3年、4年なら4年の契約で、プロのようなセブンズのプレーヤーとなるのが、とてもいい強化につながるのではないかと思います」

これから、セブンズ選手の環境や待遇はどう改善されるのか。強化体制や仕組み、強化戦略は。もっといえば、普及や育成をどう考え、どう拡充していくのか。

坂本専務理事は「もう新しいカタチに変えていかないといけないでしょう」と言った。

「これからは、7人制の専属選手をつくっていかないと難しいと思います。現実的には、トップリーグなどの企業の力を借りないとできないのですが、7人制を専門として2020年を目指す選手に対して、協会が支援していくということになるでしょう」

おそらく企業スポンサーの選手支援のやり方も変わってくるだろう。セブンズのチーム力を上げるためには、セブンズの指導者養成プログラム、レフリーの育成も欠かせない。いずれにしろ、日本ラグビーは「変革」の時を迎えているのである。

世界のラグビーの勢力図を大相撲に例えるならば、日本ラグビーは十両から幕内に昇格し、定着したようなものだろう。つまり横綱、大関の強豪とも対戦できる。強化次第では、賜杯争いに加わりうるのだった。

日本では、2019年に15人制のワールドカップが開かれる。2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される。今後の4年間を漢字2文字で表現してもらうと、坂本専務理事は熟考し、こう漏らした。

「覚悟」

日本ラグビーの強化を推進し、大会を成功させる覚悟、セブンズで言えば、東京五輪でメダルを獲得する覚悟である。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)、『新・スクラム』(東邦出版)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
(松瀬 学=撮影)
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