車1台分の差を生む返済期間の短縮
「住宅ローンのボーナス併用払いは、月払いのみのときよりも総返済額が増える。それに、ボーナスがもらえなくなったときのことを考えると、リスクが高くて手を出すことができない――」。マネー誌や住宅情報誌を開くと、このような記事をよく見かける。いまや“定説”となったような趣すらある。
3000万円を金利3%・35年返済で借りたとする。月払いのみの場合、毎月の返済額が11万5455円で、総返済額は4849万1100円。一方、総額の1割に当たる300万円分をボーナスで返済していったら、月々10万3909円、ボーナス時には6万9517円返済し、その総額は4850万7970円となる。確かにボーナス併用のほうが1万6870円ほど負担が大きくなる。
でも、ほんのちょっと条件を見直すだけで、その定説は簡単に覆される。返済期間を短くすればいいのだ。同じ前提条件で、6年短い29年でボーナスを併用しながら返していくことにしよう。返済は月々11万6260円、ボーナス時には7万7809円となるものの、その総額は4497万1402円で、月払いのみのときよりも何と351万9698円も少なくて済む。
期間を短くすると月々の返済額は増える。しかし、その分元金を早く減らすことができて利息の負担分が減り、ファミリーカーを一台買えるくらいの差額を生んでくれるわけだ。問題の月々の増額も「11万6260-11万5455=805円」だけで済む。それにボーナス時の返済も、この程度の金額なら苦にならないはずだ。正社員として会社に勤め、ボーナスをもらっている人なら、このボーナス併用を使わない手はない。
確かに「ボーナスをためて繰り上げ返済に回したいから」という人も多い。しかし、新居を購入したとなると、家具を買い替えたりで支出が増え、100万円をためていくのは大変だろう。子供の中学・高校受験などを控え、教育費の負担増に頭を痛めている家庭も多く、家計はどこも楽ではないはずだ。
それなら、無理のない範囲でボーナス併用を活用すべきではないか。先のシミュレーションで借入額の1割をボーナスで返済するようにしたのも、1回当たりの返済金額が10万円以下になるから。この程度ならば、たとえボーナスが減額になったとしても、毎月1万~2万円ずつ貯金していけばいいと考えれば、そう大きな負担にはならないだろう。
もし、ボーナスが出ないような事態に陥ったら、その時点でローンを月払いのみの形に組み直せばいい。それで毎月の返済負担が大きくなってしまうのなら、最初期間を短くした6年分を延長することで軽減を図ることも可能である。住宅ローンの返済を考える場合、このように返済期間も含めた前提条件を変えて比較検討することが大切なのだ。