英国軍の主力戦闘機タイフーンも、車輪の保護カバー、空気吸入口の支柱などの金属部品を3Dプリンタで製造・投入している。この動きは中国軍でも同様であり、01年からチタン合金の3Dプリンタ技術に力を入れ、新型戦闘機の設計や試験の過程に幅広く応用している。最新鋭のJ-31ステルス戦闘機の着陸装置全体を含む構造部分には、3Dプリンタ製品を導入しているようだ。戦闘機部品として日常的に3Dプリンタを導入する動きは、韓国軍やポーランド軍でも進んでいる。

ミサイルの研究開発も著しい進展を見せる。米陸軍は、3Dプリンタによる対地・空ミサイル製造を目指し、すでに既製品と同性能かつ低コスト・短期間でのロケットエンジン製造に成功している。レイセオン社も、3Dプリンタを使えばミサイルのエンジンから誘導システムまでのほとんどを圧倒的な速度で製造できるとしている。

対する地上戦力の「陸の王者」といえば戦車である。ロシア軍の次期主力戦車であり、装甲部隊の70%を占める予定のT-14アルマータの金属・プラスチック部品や原型試作にも、3Dプリンタが活用されている。将来的には、チタン合金製の数メートルもの装甲パーツも製造予定であるという。

そのほかにも、砂漠の砂からガラス製品を製造できるタイプ、通常の特殊セメント製の3倍の強度を持つ避難壕をつくれるタイプなど、米軍はさまざまな3Dプリンタの開発に成功している。紹介したものはほんの一部にすぎないが、各国が3Dプリンタの軍事転用を急速に進め、すでに部隊運用・開発・研究を猛烈に実行していることがおわかりいただけただろう。これは、高い性能の維持、金型やラインが不要になることによる低コスト化、在庫管理の軽減などが期待できるからである。それにもかかわらず、兵站が極めて貧弱で離島への展開すら困難な防衛省・自衛隊では、調達・導入・研究がまったく進んでいない。今、わが国が何をすべきかは、極めて明白である。

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