トラック版Uber「ハコベル」

トラック版Uberともいえるサービス「ハコベル」

【田原】最近、印刷だけでなく物流のサービス「ハコベル」も始められた。これはどういうものですか。

【松本】運送会社のトラックの空いている時間で物を運ぶサービスです。何か物を運んでもらいたい人がスマホに条件を入力すると、その情報が中小の運送会社や個人のドライバーさんのところに届き、マッチングが成立したら実際に物を運びます。Uberのトラック版をイメージしてもらえればいいと思います。

【田原】なるほど。これもシェアリングエコノミーですね。登録しているトラックはどれくらいあるのですか。

【松本】約600台です。トラック業界も印刷業界と似ていて、たくさんの下請けがいます。具体的にいうと、下請け構造の一番下にいる軽トラやミニワゴンは約27万台。ここをもっとネットワーク化して、荷主とドライバーが直接やりとりできる世の中にしていきたいなと。

【田原】中抜きがなくなるから、料金は安くなるのですか。

【松本】印刷ほどではありませんが、こちらも2~3割は安いです。

【田原】クロネコヤマトよりも?

【松本】私たちがやっているのは宅配便のような個配ではなく、チャーター便のBtoBです。車両1台丸々ご提供する形なので、もともと比較できないんです。

「ラクスル」のビジネスモデルはアジアでも展開できる

【田原】そうですか。もう一度、印刷のほうを聞きます。ラクスルは海外でやらないのですか。

【松本】印刷機の空き時間を活用した印刷ビジネスを始めたのは、私たちが世界で初めて。それを見て、いろんな国の起業家から「うちでもやりたいからノウハウを提供してくれ」という話が来ています。私たちは直接海外でやるのではなく、そういった会社に出資をして展開しています。いまインドネシアの会社に出資して、インドやタイでも検討中です。

【田原】欧米じゃなくて、アジアですか。世界初のビジネスモデルならアメリカでもおもしろそうだけど。

【松本】たしかに欧米でも印刷機の空き時間活用の仕組みはないのですが、インターネットで印刷物を販売するマーケットはすでに存在していて、後発でそこに割って入るのはちょっと難しい。アジアはインターネットによる販売も空いているので、チャンスが大きいといえます。

【田原】ちなみに海外で印刷業は斜陽ではないのですか。

【松本】印刷業の規模より、国のGDPの影響のほうが大きいですね。日本の印刷市場はGDPの約1.2%といいましたが、他の国もだいたいそれくらい。経済成長してGDPが伸びれば、印刷の市場も拡大するでしょう。