「業績5割増しコース」は、基本的には現場の一プレーヤーとして、管理職未満の一般社員とは一線を画す実績を挙げ続ける道です。たとえば営業部門なら、一般社員の1.5倍ぐらいの数字を出し続けることが一つの目安になるでしょう。

開発部門やバックオフィス部門なら、高い専門性を武器にすることもできます。人事や経理、法務といった、担当分野についての専門的知識やスキルを、「あの人が一番詳しい」「社内の生き字引」と言われるレベルまで高め、かつ常に更新し続けることが大前提です。いずれも、マネジメントには不向きでも、担当業務に関しては課内・部内でナンバーワンになれる自信がある方向けのコースといえます。

それほどでも……という向きには、他の社員との競争を避けつつオンリーワンの座を確保する「特任業務コース」があります。

部下なし管理職にはしばしば、「組織化するほどではないが、課長相当の担当をつけたい業務」が回ってきます。特定の得意先やニッチな業務分野に特化した仕事で、直上の課長でなく、その上の部長から直々に任命されるケースもよくあります。

この場合部下は付きませんが、一定の責任と権限が与えられます。ここで頑張って結果を出し、かつ仕事内容の専門性や取引先との関係をどんどんレベルアップしていって、他の社員が参入できないような「聖域」をつくってしまうのです。

たとえば、官公庁関連の調査業務を競争入札で請け負う仕事を考えてみましょう。まずは最初にとにかく落札し、1回目の発注をきっちりとやり遂げます。この際に先方のニーズをしっかり把握し、「次回はこういうデータを集められるとより効果的ですね」「そのためにはこのぐらいの人数の専門家を投入したいですね」といった提案を行っていくと、次回からはそうしたデータや人員を提供できることが応札の条件になるわけです。

このプロセスを繰り返せば、他社の参入はどんどん困難になりますし、社内的にもそこまでのノウハウを持った人材はほかにいなくなります。生き残りのための椅子取りゲームに参加しなくてもよくなるわけです。

外資系企業で長年生き延びている人は、じつはパフォーマンスが高いタイプより、担当業務の専門性を引き継ぎ不可能なレベルにまで引き上げているタイプだというのも示唆的です。ただ専門性が高いだけでなく、小規模なりに社のミッションとして成り立つもの、あるいは事業として予算を達成していけるものがベストでしょう。真面目でコツコツ型の人は、会社から評価されずにくすぶったまま終わりやすいですが、そういう人が居場所を確保するためのテクニックとして有効だと思います。