正論に基づく改革かどうかを見極めよ

「弟対父・兄」が対立するロッテホールディングスは3月6日、都内の本社で臨時株主総会を開き、創業者の長男である重光宏之氏側が提出していた「現経営陣の刷新」を求める株主提案を否決した。

勝敗を決したのは議決権の約27%を握る社員持ち株会。宏之氏は一族の持ち株会社である「光潤社」などを含め28.14%の株式を握っていたことから社員持ち株会を味方につければ過半数の議決権を握ることができた。しかし社員持ち株会は動かなかった。宏之氏は「今回は残念ながら現経営陣からの圧力が強く、現経営陣の壁を乗り越えることができませんでした」とコメントしている。

一方、「父対娘」、創業者で父の大塚久雄氏と娘で社長の大塚久美子氏が対立した大塚家具。多くの古参幹部が創業者の久雄氏を支持。株主総会で久雄氏が敗れると、粛清の対象となった。

料理レシピサイトのクックパッドでは、経営方針をめぐり創業者と経営陣が対立、社員を巻き込んだ混乱に発展している。

岡田茂社長の「なぜだ!」が流行語にまでなった三越、創業家の鹿内宏明氏が解任されたフジサンケイグループ、佐川急便、マイカル、JAL、三洋電機、これまで日本の産業史の中でクーデターと呼ばれる事件は数々ある。

中島経営法律事務所の中島茂弁護士

サラリーマンは不満を持っていても経営陣に従ってひたすら沈黙を守るべきなのか。それともクーデターに加担し、改革を断行すべきか。企業のコーポレートガバナンスなどに詳しい中島経営法律事務所の中島茂弁護士は次のように語る。

「こうした問題でまず考えなければならないのは、この改革が客観的な正論に基づくものなのかどうかということです。どんな組織でもあるのですが不満を正論だと勘違いし、会社をよくしていくことだと思い込んでしまう。勘違いしないように注意しなければならない」

では客観的な正論か、たんなる不満なのか、いったい何を基準に考えればいいのだろうか。中島弁護士は「どのような視点で見ていくかが重要です」という。

「消費者、顧客に品質と価格できちんと奉仕しているのか。社会貢献につながっているのか、という視点から本当に会社が実行できているかをしっかり見据えることが必要です。つまり正論とは業務との関連性があるかどうかということです。また、それが会社の営業にどう影響をしているのか、お客さんにどう影響しているのかです」

たとえばこれまで真面目に働いてきた幹部社員たちの間から「社長が個人的に贅沢な生活をしていて遊んでいる。だからあんな社長は辞めさせろ」といった声が上がったとする。

「重要なのは、社長の華美な生活が、業務に支障をきたしているのかということです。たとえば『取締役会に欠席しがちだ』とか、『取締役会を無視してやりたい放題のことをやっている』『仕事の企画や業務が間違っている』『お客様に迷惑をかけている』というのなら、問題だと思います。しかし、ただ『華美だから』というだけでは、それはむしろ私憤なのではないでしょうか」(中島弁護士)