「女性という生き物はわからない」──。ならば人間を一歩抜け出してみよう。霊長類の社会から人間を見てみると、「女も知らない女の性」が見えてくる。野生のゴリラと触れ合って研究を続ける霊長類学者と、脳科学者が徹底的に人間の女性について考えてみた。

必ずメスが選んでくれる

【京都大学総長 山極寿一】ニホンザルの群れにはボスがいますが、ゴリラには序列はなくて、リーダーがいるだけ。私はボスとリーダーは違うと思っています。ボスに君臨し続けるためには、常に自分の力を見せつけないといけない。リーダーというのは周囲の期待にこたえるべく振る舞えるかが問われる。ゴリラの群れで喧嘩が起こると、その際に第三者が割って入ることがあるのです。これは力関係の優劣がないからこそ可能なのですが、大人のオス同士の喧嘩ではメスや子どもが仲裁に入るし、子ども同士やメス同士の喧嘩には成長した大きなオスが間に入る。

【脳科学者 茂木健一郎】そこで活躍できればリーダーの力量を示せる。

【山極】ゴリラのメスには調停能力の高いオスを見極める力が備わっているように思います。メスがどんなオスを選ぶかというと、まず若いオスはだめですね。ゴリラは13歳から15歳で背中が真っ白になります。シルバーバックと呼ばれていて、年を取った証拠ですが、そのぐらいの年齢ではまだだめ。

さらに後頭部が盛り上がり、手足の先の毛が長くなると、いかにもリーダーのオスという立派な体格になる。それに加えて調停能力が高いオスが選ばれる傾向にあるようです。


(上)どんなオスがモテるのか(下)顔をのぞきこむ理由

【茂木】単純に力が強いだけではだめなのですね。

【山極】だけど面白いのは、ゴリラの場合、あぶれるオスがいないのです。年を取ったオスは必ずメスが選んでくれるのです。ちょっと格好いいオスがいたとしても、そこにたくさんメスが集まると軋轢が強くなる。オスは平等に接して、気配りはするけれども、限界がきたメスは、1頭でいるオスにつくほうが得だと考えるのではないでしょうか。

【茂木】一夫多妻制はストレスがかかるわけですか。

【山極】人間社会でも一夫多妻の社会はありますが、資産を持っている男のところに嫁がないと食いぶちを確保できないとか、そういう社会システムによるものだと思います。人間の女性も反目しあってしまい、ほうっておけば一夫一婦制になるのではないでしょうか。