いい意味で「寝返る」と幸福がやってくる

よく中学受験界のプロが、不合格という結果に立ち直れない親に対して「ご縁があったところが一番良い学校」というアドバイスを送り「くれぐれも入学予定の学校の悪口を言わないように」と語っているのを目にする。

それは正しい。

正しいのは正しいのだが、この文章の最後に、私は未だ金縛りが解けない母にこういう話をしておこう。

題して「小早川秀秋のススメ」だ。

超進学校のやや下に位置する学校での初めての保護者懇談会の席上。車座での自己紹介で、ある母は泣きながらこう言った。

「本当はこんな席にいるはずもなかったのに……」

周囲は目が点になったが、やがて学年も上がって行くころ、その母はこう言った。

「もうね、ここ最高!やっぱりこの学校でよかったわ!?」

そして6年後、その母の子どもは日本最高峰という大学に入った。6年前のあの日のことは記憶から抹消したらしく、その母は喜々としてこう言った。

「ここ(残念で入った中高一貫校)に入る運命だったのよ!」

私は密かにこの母を「小早川秀秋*」と呼んでいる。中高一貫校は「小早川秀秋」だらけだ。散々、文句を言って残念臭を漂わせて入学しようとも、途中で「寝返る」。ボロクソに言っていても、途中で豹変するのが「一貫校マジック」である。

編集部注* 1600年の関ヶ原の戦いで西軍(豊臣側)を裏切り、東軍(徳川側)に勝利をもたらしたといわれる戦国武将

私は未だ立ち直れない母はそれでいいと思う。無理に気持ちを抑える必要もないし、また努力で抑え切れるものでもない。ただ「寝返り」の時期を楽しみにすればいいのだ。

私は言おう。戦いを終えたすべての「中学受験生の母たちへ」。

母たち、中学受験、お疲れ様。本当に疲れたね。そして、卒業おめでとう。

春から中学生母だね。

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