石原氏起用を疑問視する声

安倍首相は、数々の要職を務めながら目立ったスキャンダルがなかった石原伸晃元幹事長を後任に決め、第一次政権を窮地に陥れた「閣僚辞任ドミノ」防止を優先。非主流派の石原派会長を閣内に取り込み、自民党内のガタガタを最小限に食い止めるよう先手を打った。今年夏に想定する衆参ダブル選を前に、これ以上の「失点」は許されないとの意志を示したといえる。

石原氏は、首相と若手議員時代に行動を共にしていた仲間で、森喜朗元首相や伊吹文明元衆院議長ら長老組の覚えもめでたい。しかし、その舌禍は有名で、環境相時代には中間貯蔵施設の建設をめぐり「最後は金目でしょ」と発言。大きな反発を受けたこともある。自民党内からは、今回の起用に「首相は大丈夫か」と疑問視する声があがる。

そこで首相サイドが検討するのは「4月の内閣改造・党役員人事」だ。16年度予算を3月末に成立させ、国会日程に余裕が生じたタイミングで人事を断行する。夏の衆参ダブル選前に「障害」となりそうな閣僚・役員は外し、改造効果で内閣支持率を回復させ、自らに忠誠を誓う人物を起用すれば「一石三鳥」というわけだ。石原氏の起用をその布石と見る向きは強い。

石原氏は、自民党幹事長を務めていた12年に「党総裁を支えるために政治をやってきたわけではない」と主張し、麻生氏が支えていた谷垣禎一総裁(現・党幹事長)の次期総裁選への出馬を断念に追い込んだ経緯がある。麻生氏は「石原氏は『平成の明智光秀』といわれている。私の人生哲学に合わない」と猛批判した経緯があり、石原氏と麻生・谷垣両氏との間には大きなしこりが残っている。

このような不協和音が露呈しても、期間は人事断行までの短い間だ。逆に「誰が首相に最後までついてくるかを見る絶好の機会」(首相周辺)との計算が働く。首相官邸には「ポスト安倍を谷垣氏が狙っている」「麻生氏はまだ再登板する機をうかがっている」など、真贋入り交じった情報がもたらされており、人物評価には余念がない。専権事項である人事権と解散権をフル活用し、憲法改正を目指す首相。心中は、「支持ある限り戦います。命燃え尽きるまで」といったところか。

(時事通信フォト=写真)
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