「過払い金」に類似、敗訴なら業界壊滅か

警察庁を中心とした当局とぱちんこ業界は、「天下り」などで癒着していると指摘されることがありますが、実際には、ぱちんこ業界が受け入れている警察庁のOBらが、ぱちんこ行政を司る現役の局長クラスや課長クラスに強い影響力を及ぼすことはまずありません。警察庁は業界にとって不都合なことでも、平気でやります。そのため今回のように、新任の課長や課長補佐が「業界全体の是正をするぞ」と言い始めると、業界の事情や過去の因習に関係なく、いきなり調査が始まるわけです。

そして、今回の警察庁の強硬姿勢は、いままで放置されてきた「射幸性の高いぱちんこ台は望ましくない」という原理原則に立ち戻るものです。それは風俗営業法上の問題だけではなく、刑法の「賭博罪」に関わってきます。我が国は刑法第185条で賭博を禁じていますが、この法律には「ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」という除外規定があります。すなわち短時間の遊興として数千円程度の賭け事をすることは問題ないとされています。

つまりぱちんこが賭博とならない理由は、いわゆる「三店方式」と呼ばれる特殊な換金方法とは別に、刑法上の賭博にあたらない程度の射幸性の低さを「保通協」の検査が保証しているからです。このため違法な台が流通しているとすれば、「ぱちんこは賭博ではない」という筋立ては崩れます。健全化を果たすためには、いま営業しているすべてのぱちんこ台を入れ替える必要があるでしょう。業界の自業自得とはいえ、数百億円のコストがかかる作業です。

翻って、昨今のぱちんこ愛好家は、財布に数万円から10万円以上を入れ、1日ぱちんこを打って勝った負けたとやっているわけですから、賭博罪とみられても仕方がないでしょう。また業界が「遵守しているから賭博ではない」としてきた風俗営業法の第9条「著しく射幸心をそそるおそれのある遊技機の基準」の解釈も大幅に見直される可能性があります。