「本当に必要なもの」の9割は不必要?
「必要(need)な買い物」というと、しっかり大義名分があって、「ムダづかい」とは正反対、"正しい買い物"かのような印象を抱きます。確かに、本来はそのはずです。
“正しい買い物”を象徴する言葉として、私は「必買(ひつがい)」という言葉を使います。造語です。「節約」という言葉がどうも好きになれず、つくり出したのが「必買」でした。「必要なものだけを買う」から、「必買」。まさに「need」の買い物を指します。
買うものを必要なものだけに限定する行為は、いわば節約といえます。お金を使わないように努めるわけですから、お金は貯まります。節約という言葉自体はあまり好きではなくても、その「効果(お金が貯まる)」は否定できません。なんとかこれをもっと前向きな言葉で表現できないかずっと考えていて思いついた言葉でした。
私は家計管理で大事なのは、節約よりもむしろお金の使い方、つまり「必買」だと思っているのですが、この言葉を使い始めてから、壁にぶち当たりました。
「必要」って何? ということです。つまり「need」の中身です。
当初は、「必要」は「必要」でしょ。多くを語る必要があるのかしら、と思っていました。が、いろんな方の家計相談をしていくうちに、「need」の中身・本質を深く考えたほうがいいと思い直しました。
「need」には盲点があります。「それ、本当に本当に必要?」と思う買い物が、世の中にはすごく多いように思います。もしかして、それ「want」だったのでは? と感じることもしばしば。
いま、私たちの「消費」はおかしくなっています。乱れています。物質的に恵まれ過ぎたためでしょうか、何が「必要」かが分からない、そんなご時世なのかもしれません。
ここで、「必要」と同時に考えてほしいのが「便利」と「楽(らく)」です。
結論から言うと、「必要」と「便利」と「楽」を混同させて、「必要」といってしまっているのではないか、ということです。それが乱れた消費の原因ではないかと思うのです。
どういうことなのか、「エスカレーター」を例に考えてみましょう。