最後に「殺人者の顔、殺される顔」を説明しよう。「出世する顔」の解説でも述べたように、幅の広い顔の男性は攻撃的である。顔の幅が広いのは、遺伝的なものと、男性ホルモンの影響によるものと考えられており、女性に関しては、顔の幅の広さと攻撃性は無関係だ。

【Q3】どちらがどちらを殺すか
偶然道ですれ違ったふたり。お互い面識はない。ふたりは取っ組み合いの喧嘩を始め、どちらかがどちらかの命を奪うことになる。殺されるのはどちらだろうか。
 

そこで本題の「殺人者の顔、殺される顔」についてだが、これを解き明かした面白い調査結果を紹介しよう。

ある研究者は「幅の広い顔の男性は攻撃的で支配的な傾向がある。ゆえに、ほっそりした顔の男性を相手にした暴力による喧嘩で勝つことが多い」といいう仮説を立てた。

仮説をもとに、この研究者は米国で発見された無数の頭蓋骨と、殺害された人々の200以上の頭蓋骨の幅を調べた。殺害された人の頭蓋骨は、死因によって“接触的な暴力”と“その他”に分けられた。接触的な暴力とは絞殺、刺殺、撲殺などで、その他は銃殺や毒殺、また死因不明などだ。

ほっそりした顔の男性は、幅の広い男性に比べて、接触的な暴力で命を落とすケースが圧倒的に多かった。幅の広い顔の男性のほうが体を使った喧嘩を多くしているはずなのに、ほっそりした顔の男性のほうが、そういった喧嘩で死亡する確率が高いのだ。

顔の幅の広い男性を見かけたら、殺されやしないか警戒することはもちろんだが、嘘をつかれやしないかということにも注意したい。実験により明らかにされているので紹介しよう。

被験者にふたつのさいころを投げさせる。出た数で50ドルのギフトカードがあたるくじに参加できる回数が決まるという仕組みである。結果はなんと、幅の広い顔の男性はほっそりした顔の男性の9倍も結果を水増ししていた。さいころを振って実際に出た数字よりも高い数字を申告するケースが9倍にもなったのだ。

幅の広い顔の男性は、ほっそりした顔の男性に比べて、自身の目標をかなえるために、倫理にもとる行動を取るのもいとわないことを示唆しているといえよう。


右、選択肢Aは「横幅の広い顔」
[解説3]「ほっそりした顔」は殺される(答え:B)
「幅の広い顔の男性が、ほっそりした顔の男性を殺す」ことが実験により判明している。幅の広い顔の男性は攻撃的で支配的な傾向がある(女性の場合はあてはまらない)。幅の広い顔の男性のほうが体を使った喧嘩を数多く経験しているが、ほっそりした顔の男性のほうが、絞殺、刺殺、撲殺などの接触的な暴力によって死亡する確率が高いことがわかっている。
 

日本のみなさんに声を大にして伝えたいのは、すべては人が無意識のうちに発している手がかりをもとに予測できるということ。例えば、あなたが投資するつもりの企業がこれから高い収益を挙げるかどうかを知りたければ、その答えはCEOの顔に書いてある。CEOが口にした言葉だけで判断しては、幸せを掴み損ねるだろう。

この10年間、書籍の売れ筋は“人がいかに間違いを犯しやすいか”をテーマにした本である。その事実に照らしてみると、私のように人の欠点ではなく、優れた部分、すぐれているはずの部分に着目するのは得策ではないだろう。それでも人が持つ優れた能力を私はみなさんに伝えたい。

(構成、撮影=大野和基 写真=時事通信フォト)
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