文部科学省認定の教科書を英訳して教える

国語、英語、プログラミング言語を使いこなせるトライリンガルになれれば、確かに理想的だ。しかし、学校にいる時間は限られている。国語や算数などを学ぶだけで、時間切れとなってしまいそうだが、どうやって“3言語”をマスターさせるのだろう?

竹内薫(たけうち・かおる)
東京大学教養学部教養学科卒業後、同大学の理学部物理学科に入り直して卒業し、カナダのマギル大学大学院で理学博士を取得。現在はサイエンスライターや作家として執筆活動のほか、NHKの科学番組のナビゲーター役も。

「プログラミング言語はいわば計算言語です。算数の中に組み込み、1年生から教えていきます。そして、国語や社会などは日本語で学びますが、それ以外の科目は英語で教えます。ホームルームなどの時間も、英語。年齢が低いうちから英語をシャワーのように浴びせて英語耳をつくるのが目的です。決して、英語の文法や単語の詰め込み勉強をさせるわけではありません」(竹内さん)

MIRAI小学校は一条(学校教育法に定められた学校)認定を目指しているので、教科書も文部科学省認定のものを使う予定だ。そのため「授業では既存の教科書を英訳して、教えていくことになる」(竹内さん)という。日本の指導要領にのっとったカリキュラムを、英語で教える。つまり、英語イマージョン教育(没入法と呼ばれる外国語習得法)で効率的にマスターさせるというわけだ。

「東京大学を頂点と考える内向き志向」ではない

英語イマージョン教育を行っている小学校は、全国でも数が少ない。そこで意識の高い親は、インターナショナルスクールに通わせたりしているわけだが、これだと国語の勉強ができず、完全に“外国人”に育ってしまう。思考を深めるための国語もしっかり学べる英語イマージョン教育の学校で、プログラミングも学べるとしたら、世界のエリートと伍していける人材が育つかもしれない。

「MIRAI小学校は、いわば実験校です。ここで行う授業は教育指導要領にのっとっているので音声教材や英訳した教科書をパッケージ化できれば、他の公立小学校でも同様の授業が展開できます。日本の未来を担う子供たちのために、全国に波及できるようなモデルをつくりたい」(竹内さん)

卒業生には「東京大学を頂点と考える内向き志向」ではなく、世界へ飛び出し社会を変革できる人材となってほしい、と竹内さんは願っている。