外国人の旅行者がネットを介して申し込み民家に宿泊する「Airbnb」の利用者が、日本でも増えている。一方で、訪日外国人観光客の増加をビジネスチャンスと捉え、Airbnbを不動産投資の一環として活用する人も出てきている。

ワケあり物件を古民家風の旅館に改装

横浜の住宅街。車も通れないほど狭くて急な坂道を、ブラジルから来た親子3人が、重そうなトランクを押しながら上ってきた。3人はスマホを確認しながら一軒の民家の前で足を止めると、門柱にあった小箱の番号ボタンを押して中から鍵を取り出し、敷地の中へ入っていく。

室内は和モダンテイストに仕上げてある。

民家は小高い丘の上にあり、手入れの行き届いた小さな庭の向こうには、開けた景色が広がっている。ガラガラと雨戸を開ける音がして、中から「ワオー!」と歓喜の声が聞こえた。

この平屋建ての民家は10月からAirbnb(エアービーアンドビー)として貸し出されている。Airbnbとは、宿泊施設の貸し借りをネットを通じて仲介してくれるサービス。運営元は2008年に創業したカリフォルニア州サンフランシスコにある企業だ。オーナーが住まう家屋の一室、庭に建つ離れ、民家まるごと一軒、別荘、はたまた古城までが貸しに出され、そこに泊まりたい旅行者がネットを通じて申し込む。そのネットワークは、今や世界190カ国・3万4000都市にある150万件以上に及んでいる。

ブラジル人の家族が借りたこの民家は、昨年末まで高齢の女性が1人で暮らしていたのだが、福祉施設に入居することになったので売りに出た。築年数は約60年、敷地面積は約160平米(建物は60平米)で、価格は約500万円だった。横浜市内では破格の安さだ。

しかし、急峻な階段坂の上にあり、駅からは15分ほど歩く。路地からさらに奥まったところにある旗ざお地で再建築は不可。建物の痛みは激しく、家具や生活物資が残されたままのいわゆる「わけあり物件」。これに目を付けたのが、不動産投資家の紺野健太郎氏(37歳)だった。