面白くするのも、つまらなくするのも、人

外部から風を取り入れ活性化を図らなければ、地域は衰退するばかりだ。地元に眠っている魅力や価値に、地元の人が気づくのは困難。第三者の目が大事になる。そこで問われるのが受け入れ側の姿勢だ。覚悟のない無責任な風の人なんて必要ないと拒絶するのか、あるいはどんな風であっても歓迎するのか。「これからは、風の人に『来てくれてありがとう』と言える地域が生き残っていくのだと思います」と著者の1人、田中輝美氏は書く。実際、本書で紹介される風の人も順風満帆だったわけではない。挫折もし、迷走もする。ただ、そんな彼らを見守り、励ます土の人たちがいた。

田中氏は出身地島根の山陰中央新報社元記者。現在は「ローカルジャーナリスト」として活動する。聞きなれないこの肩書には、東京中心のメディアのあり方に対するアンチテーゼも込められている。地方はおもしろい、地方から外に向かって情報を発信していきたい、そして地域と外部とのつながりをつくりたいという思いがあるという。それに共感したのが共著者の藤代裕之法政大学社会学部准教授(ジャーナリスト)。地域で活躍する若い人のことを広く知ってもらために、取材・執筆にあえて研究室のゼミ生たちを加えた。現場で話を聞き、見て回る中で、学生たちの仕事観や意識が変化するのも興味深い。

本書は成り立ちもユニークだ。この本が日の目を見たのは、クラウドファンディングがあったからだ。東京の出版社に断られ、ならば自力でおカネを集めようとプロジェクトを立ち上げた。幸いにも多くの支援を得て目標額はすぐに達成、地元の出版社も著者の意気に応えてくれた。本を出す一つの新たな形を提示したものといえよう。

「地域をつくっているのは、人です。面白くするのも、つまらなくするのも、人。だから、地域の問題なのではなく、あなた自身がどうするかです」(田中氏)。ほんとにそうだなと思う。本書には、地方で暮らしたいと考えている人はもちろんのこと、都会だって同じで、とにかく何かやってみたいという人にとってのヒントが詰まっている。また、外から人に来てほしいと願っている地域、受け入れ側の人にとっても大いに参考になるはずだ。

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