決算で「タラレバ」発言の財務部長
東芝の不祥事が止まらない。2015年2月には証券取引等監視委員会から報告命令を受けたことが発端となって不正会計や不適切会計などの会計不祥事が次々に表面化。6月には決算が出せないという異例の株主総会を開催、取締役の選任もできずに、9月の臨時株主総会までの間にそれまでの取締役が業務を引き継ぎ、問題収拾にあたることを発表し、なんとか了承してもらったという始末だ。
その後田中久雄社長をはじめ、西田厚聰相談役と佐々木則夫副会長の歴代3社長、それに6人の取締役が引責辞任する形で幕引きを図った。
しかし事態はそれでは終わらなかった。8月31日を期限としていた決算発表と有価証券報告書の提出を9月7日まで延期するという大失態を繰り返した。
東芝の室町正志社長は9月7日の記者会見で「株主、投資家のみなさんには深くお詫び申し上げます」と謝罪したが、事態はそれほど簡単なことではない。東証一部上場銘柄中で2度も有価証券報告書の提出が遅れるなど初めての事態。日本経団連の歴代会長を輩出してきた名門企業としてはあるまじき大失態だといわれてもしかたがない。しかも当初は赤字転落はないのではないかとみられた最終損益も結局、378億円の赤字。赤字決算を不正会計で粉飾してきた実態が浮き彫りになり、東芝の経営のあり方が改めて問われることになった。
渡邊幸一・財務部長は、「2013年度の営業損益は2571億円。これに対して14年度は3454億円と実質的には増益したと評価できる」と説明している。
「この中にはさまざまな減損などがあります。STP(サウス・テキサス・プロジェクト)は13年度は310億円の減損。14年度は410億円の減損。その特殊要因がなかりせば、400億円以上の増益が達成できたわけです」
決算発表で「タラレバ」はなんとも不謹慎、事実を事実として認められずに不正会計に手を染めた東芝の体質そのものを示している。
現実には営業損益は1704億円。前年同期比較で867億円の減益になっているのは、事業撤退や訴訟関連、資産評価減などの特殊事項があったためだということだが、資産の評価減などが東芝の特別調査委員会や第3者委員会の調査の中できちんと行われていれば、決算発表や有価証券報告書の提出も遅れずに済んだはずだ。