敬語とは社会的な役割に基づく演技である

「上司のことを深く尊敬しているわけでもなければ、顧客のことを神様と思っているわけでもないのに、なぜ、敬語を使うのでしょうか。端的に言ってしまえば、人間関係を良好に保つため。周囲への大人の配慮です」

一橋大学国際教育センターの石黒圭教授に、ビジネスメールにおける敬語について教えていただいた。

「ですから、敬語の使い方に失敗して、人間関係をこじらせてしまったら敬語を使った意味はありません。敬語はそれ自体が目的ではないのです。敬語は社会的な役割に基づくもの。上司と部下、店員と客という役割を演じることが求められているのです。ですから、私は大学では学生に敬語で声をかけられますが、家では娘に『馬になれ』と命令されています。それは全く不自然ではありません。職場では教師を演じ、家庭では父親を演じているからです。同じ親でも威厳ある父親を演じるときもあれば、優しいパパを演じることもあります。敬語は周囲の人間との人間関係を悪くしないことを目的とした社会的な役割に基づく演技なのです」