長期日程は前述のように常に鉛筆書きの“仮日程”でしたが、決定した日程、つまり「ボールペン書きの日程」は一切変更しないようにしました。
なぜならトップの日程が5分狂うと、組織の末端では半日ずれてしまうのです。たとえば小泉厚生大臣の時代。大臣がまず日程を決めると、それに合わせて事務次官の予定が固まります。その次官のスケジュールを基に各局長が自分の日程を作成し、さらに、それに従って各課長、各補佐、各係長が……と、順々に予定を組んでいきます。極端に言えばトップが1分でも急に予定をずらすと、全体がずれ込み、機能不全・士気低下を招くこともあるのです。トップにとって大切なのは絶対にブレないこと。それは、政策だけでなく、日程に関しても同様なのです。
そのためには、どうするか? 日程に空白時間をつくるのです。私は小泉首相の日程に「飯島秘書官打ち合わせ」という項目を30分~1時間程度の幅で、必ず入れるようにしていました。
急な面会要請や突発的な用件は、すべてその時間の中で消化する。そうすれば予定外の用件のために次の会議に10分遅れた……というような事態も避けることができます。
先日、ある社長から私に会いたいと言っていただいたのですが、広報から「4カ月先まで社長の予定が埋まっている」と言われ驚きました。これは経営者の下にいる人間が、怒られたくないばかりにイエスマンになって、日程に空白をつくるまいとした悪い例です。企業の活力を奪うような融通の利かない、修正のできない日程づくりは見直したほうがいいかもしれません。
(飯島勲/小山唯史=構成 浜村多恵=撮影)