変化の時代に求められる人財とは

ジェニーン氏と同じで、柳井さんは数字に表れてこない事実、例えば感情とか、空気感とか、変化の流れを把握するのが、リーダーたる経営者や店長の務めだと力説しました。やはり、すべては店舗にあり現場にあるのです。

議論も抽象的な発言に対しては、聞く耳を持たない人です。「そうは言うけど、君は現場を見たのか?」「栃木の店。行ってみたのか?」「直接見て確認したのか?」「店長とじっくり話したのか?」というふうに、柳井さんはあくまで実際に見聞し確かめたことしか、意見として認めず、空想や机上の空論はバッサリ切り捨てました。こうした姿勢は、私にとって非常に学ぶところがありましたし、企業のカルチャーとしてきわめて大切なことだと、今も強く確信しています。

『プロフェッショナルマネジャー・ノート2』ハロルド・シドニー・ジェニーン著・玉塚元一解説(プレジデント社刊)

経営者は偉大なるリーダーでなければなりません。そのためには大きなビジョンを描き、確固たる使命感を持っているのは当然です。

しかし一方で、現場・現物のディテールをよく理解して、そこに吹いている風の向きとか、肌で感じる感覚といったものを、微に入り細に入り感じ取ることができなければなりません。そして、全体上と下細部を絶えず行き来しながら、最適と思える解を出し続けなければならないのです。それが真のリーダーのあるべき姿といえます。

かつてユニクロの売り上げが少し落ちたとき、徹底的な市場調査をしました。顧客から発せられるマイナスの発言を聞くことで、改善点を洗い出し、なんとか打開しようと試みたのです。

結果、売り上げは見事に回復し、むしろ前より良くなりました。これなどはジェニーン氏と同じで、「どうしてだ?」と思ったら、納得できるまで裏を取ることの重要性を教えられました。

現在は「変化の時代」です。時代に対応できない企業は姿を消す……これはまぎれもない事実であり必然です。わが国の構造自体が、これからの10年くらいで、大きく変わらなければなりません。しかし考えてみれば、変化を迫られる状況というのはチャンスに他なりません。

変化はさまざまな社会問題が顕在化することで生じてきます。それを一つ一つ解決して、実質的な社会貢献・価値貢献ができれば、企業は発展します。知恵を絞り、全力投球できる絶好の機会なのです。

問題解決のための仮説を立て、先頭に立って旗を振り、泥まみれになりながら実行する……それが新しい価値観やビジネスモデルであれば、必ず成功します。変化の時代にはそんな人財が求められています。ぜひ、自分もそうありたいと思っています。

※本連載は書籍『プロフェッショナルマネジャー・ノート2』(ハロルド・シドニー・ジェニーン著・玉塚元一解説)からの抜粋です。

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