短距離のジャマイカ人、水泳の日本人遺伝子

概して北半球に起源のある人種には、水泳に長けた身体的能力をもった遺伝子がある。日本人は胴が脚に対して長い傾向にあるが、これはまさに水泳に向いた遺伝子をもった体であることを証明している。

『スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?』(デイヴィッド・エプスタイン著 早川書房)

筋繊維には、遅筋繊維と速筋繊維がある。遅筋繊維はエネルギーをつくるのに多くの酸素を必要とし、瞬発的に筋肉を収縮させることができない。しかし、速筋繊維と比べると疲労が生じにくいので、走り続けることができる。それが遅筋繊維をもつ確率の多い日本人が、短距離選手よりもマラソン選手を多く輩出している理由の一つだ。

まったく反対なのが、南半球系の人々のスポーツ遺伝子だ。ウサイン・ボルトが群を抜いているのは明白だが、驚くべきはその遺伝子なのだ。速筋繊維の中でも“超”のつく超速筋繊維と呼ばれる遺伝子をもっているので、普通の人よりも少ない訓練で脚が速くなる。100メートル走の世界記録がより速くなっている理由を遺伝子の観点から言うと、記録保持者たちには、ACTN3という速筋繊維にしか存在しない「スプリント遺伝子」があることがわかっている。しかもほぼすべてのジャマイカ人にこの遺伝子があるのだ。

スポーツ科学ジャーナリスト
David Epstein
(デイヴィッド・エプスタイン)
米国出身。 コロンビア大学大学院修士課程修了(環境科学、ジャーナリズム専攻)。「スポーツ・イラストレイテッド」誌のシニア・ライター。同誌でスポーツ科学、医学、オリンピック競技の調査報道を担当し、記事での受賞歴も多数。学生時代は、中距離走の大学代表選手として活躍。著作『スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?』(早川書房)。
(大野和基=構成、撮影)
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