天才をつくるのは、遺伝か環境か──。長く続くその論争に全米注目のスポーツ科学ジャーナリストが答える。最新の遺伝子研究とスポーツの観点から、子どもの才能に迫る。

天才遺伝子に惑わされる、早期英才教育の危険性

残念ながら、今ブームになっている遺伝子検査はそれほど万能ではない。国を代表するトップレベルのアスリートが、トレーニングの成果に決定的に影響する遺伝子をもっているかどうかを検査することは重要だろう。だが、一般人向けの遺伝子検査はまだまだ未完成で、そのほとんどが企業の情報収集か金儲けを目的にしている。

あなたの子どもに特定の能力に秀でている遺伝子が見つかったとしても、その能力を形成する遺伝子のほんの一部が見つかったにすぎないのだ。つまり、そうした一般向けの遺伝子検査の結果は、実際にその遺伝子情報に従って子どもの習い事やトレーニングを今すぐ限定していくほどの情報ではないということに気付いてほしい。

スポーツ科学ジャーナリスト デイヴィッド・エプスタイン氏

日本でも子どもが幼いうちに遺伝子検査を受けさせて、短距離に向いている遺伝子が見つかれば、それに特化して訓練させるのがベストであるといった間違った考えをもつ親がいるのではないだろうか。著書“The Sports Gene”(邦題『スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?』)を2013年に上梓してから、全米のトレーナーやチームからも遺伝子検査について多くの質問を受けてきた。